そのとき、夏さんのトラックの前を走っていたのはベンツだった。もしベンツにぶつけてしまったら「私の車を売ったところで弁償できない」。そう考えた夏さんは、右前方の公衆バスなら何とかなるかもしれないと思い、ハンドルを大きく右に切って自らバスに追突していった。
何回かの衝突のあと、夏さんのトラックはバスと別のトラックには挟まれる形で停車。事故を目撃した人の話によると、夏さんのトラックは、「気が狂ったかのように」突然バスにぶつかっていくように見えたという。夏さんのトラックはフロントガラスが粉々に砕けてしまったが、何よりも幸運だったのはバスの乗客を含めケガ人が1人として出なかったことだ。もちろん、バスの運転手や乗客は全身冷や汗ものであっただろうが……。
事故後、メディアからぶつけられた「バスには多くの乗客がいる可能性があり、彼らの安全を考慮に入れましたか?」「ベンツに追突しても車は止められるでしょう?」との質問に対し、夏さんは「考える余裕はなかった。私は自分の身の安全を考えて車を止めることしか考えられませんでした」「ベンツは高過ぎるので、私の車を売っても弁償できません」と答えている。
ちなみに弁護士の話では、夏さんの選択は間違っており、場合によってはバスに追突するほうが弁償額は大きいようだ。また、仮にバスの乗客に死傷者が出た場合、重い刑事処分を科せられることは避けられない。乗客数十人の命よりもベンツの価格を重視した夏さんに、中国のネットからは「がっかり」「あきれてものが言えない」などの批判意見が続出している。