「アンブリン」は約26分の短編映画。スピルバーグ監督がまだカリフォルニア州立大学在学中に撮影したもので、これを認めたユニバーサルが、スピルバーグ監督と長期契約を結ぶきっかけとなった作品だ。「アンブリン」がなければ、後のスピルバーグ監督のヒット作品は世に出ていなかったと言っても過言ではないほど、スピルバーグ監督を語る上では欠かすことのできない作品として知られている。
また、スピルバーグ監督は1982年に自ら製作会社を立ち上げているが、その会社は「アンブリン・エンターテインメント」と名付けられている。「アンブリン」から名前を取るほど、スピルバーグ監督にとっても思い入れの強い作品ということが分かるだろう。
ただ、「アンブリン」は、日本では1970年代に「ぴあフィルムフェスティバル」で上映されたことがあるのみで、劇場公開はなし。米国では映画系の大学のライブラリーなどに稀に収蔵されていることがあるようだが、ビデオやDVD化もされていないため、今となってはほぼ見ることができない「幻の作品」だった。ところが、今年4月30日にYouTube上に全編をアップロードする人物が現れ、ネットでジワジワと話題を呼んできている。通常、この手の著作権侵害動画はYouTube上からすぐ削除される場合が多いが、現時点(8月5日19時)では削除されていない。
先日、「崖の上のポニョ」がネットの動画共有サイトにアップロードされた際には、ネットから猛批判が浴びせられていたが、「アンブリン」のYouTubeコメント欄は荒れる様子はなく、「素晴らしいフィルムだ」「スピルバーグは天才」「偉大な短編映画」という映画の感想、そして「どうしてこの動画を持っているの?」「アップロードしてくれて有り難う」といった投稿者への質問や感謝などが並んでいる。