こうした中で、五輪のために中国を訪問する人のパソコンやPDA、携帯電話といった通信機器が中国の電子スパイに利用される危険があると、米国家安全保障局(NSA)が警告している。
その警告によると、北京五輪のために中国を訪れた人が無線ネットワークを利用する際、すべてのデータが中国政府にモニターされ、その通信機器を遠隔操作して米国の政府や企業のサーバーにウィルスを送り込む可能性があるのだとか。この警告以前にも、米海外安全対策協議会(OSAC)が中国政府と企業は公的および個人のコンピュータへのアクセスを容易にするために電子スパイ活動を行うとのレポートを発表しているという。
タカ派で知られる米中経済安全保障再考委員会のラリー・ウォーツェル議長(元北京駐在武官)は「中国政府にとって治安または政治上、中国企業にとってビジネス上の興味がある対象ならば、実質的に100%の確率で電子機器を介した操作や監視を行うだろう」としており、米国だけでなく日本を含め各国の政府や企業にとっても危険であることを示唆している。
また、米下院情報委員会のマイク・ロジャーズ氏(元FBI捜査官)は、政府の電子スパイ活動対策の不十分さを指摘するとともに「米国のネットワークにアクセスするためなら、中国人はあらゆる方法を駆使するだろう」と述べた。
これに対して在米中国大使館は、USAトゥデー紙の取材に応じなかったものの、電子スパイの可能性を否定。さらに中国政府は、先月開いた記者会見で「米政府が主張するわが国のスパイ活動は、根拠のない意図的な作り話だ」としている。
真偽のほどは分からないが、いずれにせよ、五輪のため中国を訪れる予定の人は、ネットワーク接続の前後にウイルスチェックをしたほうがよさそうだ。