全勝優勝を遂げた27日には、エンフバヤル・モンゴル大統領から祝電が届き、翌日には横綱審議委員会が満場一致で横綱に推薦。30日午前に行われた日本大相撲協会の番付編成会議と理事会で正式に横綱への昇進が決定した。今年の初場所で角番までいった大関が、尊敬している貴乃花をしのぐ史上3番目の若さで第69代横綱になったのだ。
宮城野部屋で親方や妻とともに相撲協会の使者である大島親方と春日山親方を迎えた白鵬は、伝達式で「精神一到を貫き相撲道に精進いたします」と口上を述べた。この「精神一到」は、前日に妻とともに考えた候補の中から選んだもので、中国の儒学者・朱子の語録などを集めた「朱子類語」(1270年)に記されている言葉。正式には「精神一到何事か成らざらん」で、「精神を集中してことに当たれば、どんなことでもできないことはない」という意味なのだ。
優勝、綱取りを見届けるため、今回は父母と出産を控えている1つ上の姉を除く4人の兄弟が来日。父のムフンバトさんは、モンゴル相撲「ブフ」最大の大会で5連覇を遂げるほどの大横綱で、日本でいうところの国民栄誉賞などを受賞するなど、国民的な英雄なのだ。授賞式で着ていた民族衣装の胸には、多くの勲章が光っていた。
家族だけでなく、来日当時に入門が決まらない白鵬の受け入れ先を見つけることに奔走した旭鷲山や受け入れを快諾した熊ヶ谷親方も、弟分、内弟子の横綱昇進に万感の思いがこみ上げていたようなのだ。
史上最長となる3年半も1人横綱だった大相撲、ついに「青白時代」が到来する。横綱が2人ともモンゴル人というのは日本人力士のふがいなさを露呈しているのだけど、悪役となってしまった朝青龍に対するベビーフェイスとして、白鵬には横綱らしい堂々たる相撲と品格ある態度で角界を牽引してもらいたいのだ。