わが家の食卓(といっても食べるのはぼく1人だけど)でも、炒め物や煮物にも使うだけでなく、焼き魚や刺身、しらすおろし、おひたし、冷や奴などがよく並ぶので、ソースやケチャップがなくても困らないけど、醤油は本当に欠かせないものとなっているのだ。最近は醤油にこだわっている人が多いようで、丸大豆を使用したものやアミノ酸(窒素分)が多く含まれている特級や上級のものがよく売れている。そのなかでも究極の高級醤油とも言うべきなのが、今回出荷された「玄蕃蔵」なのだ。
「玄蕃蔵」は、ヒゲタ醤油の創業時である江戸初期の味を再現すべく、2004年に製造を開始したもの。原料は醤油に適した国内産の大豆と小麦を使用し、寒い時期に仕込みを行い、春、夏と発酵させて秋に出荷するという、現代の醤油造りでは考えられないような手間と時間をかけているのだ。特に現在輸入率98%のなか、国内産大豆を集めるのは相当大変だったみたい。仕込みの段階で、同社の創業者であり商品の名前の由来となっている田中玄蕃の手記にあった「秘伝」(もろみの発酵後期に甘酒を加えるのだとか)も採用している。
江戸時代の製法に従っているだけあって、儀式も忠実に再現。もろみを仕込む11月下旬には「仕込み式」、1月7日にはもろみをかき混ぜる「初櫂入れ式」、3月3日にはもろみの状態を見る「諸味改め式」、5月5日には完成したもろみを同社工場敷地内になる高倍神社への「諸味奉納式」、7月7日には甘酒を加える「秘伝極めの式」が行われ、ようやっと今回行われた出荷儀式である「蔵出し式」に至るのだ。
こうして、丁寧な製造と丁重な儀式によって作られた「玄蕃蔵」は、毎年3万5000本の限定で出荷される。完全予約制なので今回完成したものは手に入れられないけど、来年の5月までに申込書を請求(ヒゲタ醤油のホームページ参照)すると、来年の9月中旬までに届けられるのだ。1本1800円。ぼくも注文してみようかなあ。