萩原の降板は、契約書に織り込まれた「撮影に支障をきたさない」という条項の不履行ということで製作委員会側から通告されたもの。当初の出演料1,500万円のうち半分の750万円はクランクイン前に支払われているが、萩原は契約書どおりの出演料全額の支払いを要求。岡田裕プロデューサーの携帯電話の留守電に「国税局、警視庁、山口組、住吉、熱海の若頭が全部協力してくれまして。『やったろうじゃないか』と言っております」「必ずやっつけますから」などと脅迫めいたことを吹き込んでいたという。このやり取りを岡田プロデューサーが警察に証拠として提出し、声紋鑑定などを行った結果、本人と確認されたために逮捕に至った。
「透光の樹」はすでに萩原の代役として永島敏行が起用され、劇場での公開も終了。この作品は「探偵物語」などの演出で知られる根岸吉太郎が監督を務め、出演者は秋吉久美子、吉行和子、平田満、寺田農、戸田恵子といったベテラン俳優がズラリと並び、音楽には世界的なトランペット奏者である日野皓正が起用されるなど気合いの入った作品だっただけに、萩原とのトラブルによってミソが付いてしまったのは、残念な話だ。