敬虔な仏教国家であるブータンではもともと喫煙をはばかる傾向があるそうで、すでに20行政区のうち18地区でたばこの販売が禁止されていたのだ。そして今回、首都ティンプーともう1地区でも販売を禁止するのだそう。12月17日以降は、
・自分の家・部屋以外での喫煙を禁止(外国人も)
・国内全地域でたばこの販売禁止
・販売すれば営業許可取り消し+罰金1万ヌルタム(約2万3千円)
・外国からの持ち込みには100%の関税を課す
となるのだ(asahi.com参照)。
チベットとインドに囲まれた秘境の地ブータンは、17世紀にチベット僧ンガワン・ナムゲルによるラマ教国として始まったのだ。世界の王朝が革命により倒れていくなか、1907年に王制が樹立し現国王の曾おじいさんにあたるウゲン・ワンチュクが王位に就いたのだけど、そのわずか3年後には英国の保護領となり、47年に英国からインドが独立すると今度はインドが保護領のような半支配をしてきた。現在でも、インドがブータンに外交助言できる条約を結んでいるのだ。そんな状況下、侵略や争いの飛び火を防ぐために鎖国政策を敷いてきたブータンだけど、現国王のジグミ・シンギ・ワンチュクが即位した72年から、鎖国を徐々に解いて近代化を目指すようになったのだ。
維新後の日本とは対照的に伝統尊重と近代化を慎重に進めるワンチュク国王の政策は、今回の国家的禁煙だけでなく、国民に民族衣装の着用を義務付けたり、先述したGNHに基づく行政や小学校から国語(公用語のゾンカ語)を除く全科目を英語で行うなど、なかなか目を見張るものがあるのだ。この近代化がネパール系国民への差別を生み、ブータン難民問題を噴出してしまっている事実は否めないけれど、今後も同国王の手腕に注目なのだ。
しかし、国全体が禁煙とは、観光で行ったらちょっとつらいかも。インドに行ったときも、宗教的に喫煙(だけでなく飲酒も)を嫌がられる雰囲気でつらかったけど、公衆衛生的に今後こういった国がどんどん増えていくのだろうなあ。先進国の中で唯一喫煙率が落ちていない日本に住んでいて、愛煙家としてはよかったのだ。