江戸風鈴は、現在製造しているところは2か所で、その1つである「篠原風鈴本舗」(東京都江戸川区。もう1か所は家族が経営する「篠原まるよし風鈴」)の当主・篠原儀治さんが名付けたもので、ガラス風鈴のことを指すのだ。その作り方は、1350度の炉のなかに溶かしてあるガラスを巻き取り、軽く膨らましたあとに針で小さな穴をあけ、ひと息で膨らませて(「宙吹き」という)、最後に絵をつけて完成する。2人1組で1日500個。すべて手作りなのだ。
ぼくにとって風鈴のイメージというと、夏に浅草のほおずき市で親が買い求めたほおずきのオマケで、ほとんどの下町の家庭がそうであるように、秋になろうが冬になろうが1年中ぶら下がっていた。翌年の夏にまた新しくなるのだけれど、冬に聞く風鈴の音なんて、寒々しくて無粋きわまりないのだ。しかし実家を離れてみて、いつももの悲しく鳴っている風鈴の音が聞こえてこないのも、逆になんだか淋しい気もする。
どれ、ひとつ、今年はほおずきのオマケじゃなくて風鈴をメインに買ってやろうかと「篠原風鈴本舗」のホームページを見てみると、あるわあるわ、可愛い風鈴がたくさんありました。風鈴イヤリングなんてえのは「ウルサくってかなわねえだろ!」と突っ込みを入れてしまったけれど、昔ながらの金魚柄やら紫陽花柄、市松模様にサッカーボール柄なんてのもある。そしてぼくは、「卓上風鈴」ってのがイッチ気に入ったのだ(すべて通販可)。
同ホームページには、通販だけでなく「江戸風鈴の由来・歴史」や「製造過程」、当主の儀治さんが書くエッセイ「江戸風鈴師、篠原儀治のチリンと一言 ふうりんばなし」などが載っていてなかなか楽しめるのだ(篠原さんはぼくの実家のすぐ近く、向島の生まれだそう)。風鈴や下町に興味がある人はぜひ訪れてみてほしいのだ。