ワールドシリーズ観戦レポート

2004/10/29(Fri) 00:33

 メジャーリーグ好きにはまさに「夢の祭典」と言えるワールドシリーズ。メジャーリーグは9月の末にレギュラーシーズンを終え、プレーオフがスタートします。プレーオフに参加するのは8球団。アメリカン・リーグ&ナショナル・リーグそれぞれの地区(東地区、中部区、西地区)を制した6球団と、両リーグのワイルドカード(各地区2位の中の最高勝率)を獲得した2球団、計8球団しか駒を進めることができません。その中から最初に「地区シリーズ」で4強が選ばれ、次の「リーグ優勝決定シリーズ」で、ワールドシリーズへのチケットを手にする各リーグの覇者が決まります。そして最後に行われる「ワールドシリーズ」で、その年の頂点に立つ球団が決定するというわけです。

 このワールドシリーズは1903年から始まりました。以降、1904年と、ストライキが決行された1994年の2度キャンセルされただけで、もう100年以上の歴史があります。ワールドシリーズ優勝球団の選手には、チャンピオンリングが贈られ、それはベースボールプレーヤーとしては最高の栄誉であるのは言うまでもありません。

 さて今年の2004年、プレーオフに進出したのは次の8球団です。

  アメリカン・リーグ ナショナル・リーグ
東部地区 ニューヨーク・ヤンキース アトランタ・ブレーブス
中部地区 ミネソタ・ツインズ セントルイス・カージナルス
西部地区 アナハイム・エンゼルズ ロスアンゼルス・ドジャーズ
ワイルドカード ボストン・レッドソックス ヒューストン・アストロズ

 プレーオフ最初の「地区シリーズ」では、次のような対戦カードになりました。5試合中、3試合を勝てば次に進むことができます。

ア・リーグ地区シリーズ ナ・リーグ地区シリーズ
ヤンキース vs. ツインズ カージナルス vs. ドジャーズ
エンゼルズ vs. レッドソックス ブレーブス vs. アストロズ

 この中から「リーグ優勝決定シリーズ」に進んだのが、ヤンキース、レッドソックス、アストロス、そしてカージナルスの4球団でした。

 ア・リーグの優勝決定戦はワールドシリーズと同じく7試合中、4試合勝てば次に駒を進めることが出来ます。このシリーズではなんと、ヤンキースが3連勝してからレッドソックスが4勝するという、奇跡的な試合展開を見せてくれました。ナ・リーグもカージナルスが初戦から2連勝後に3連敗して窮地に追い込まれましたが、最終的に第7試合目でナ・リーグのチャンピオンシップを手にしました。

 こうして波乱万丈のプレーオフを生き残ったボストン・レッドソックスとセントルイス・カージナルス。果たして今年チャンピオンになるのはどちらでしょうか。カージナルスが勝てば、1982年から22年ぶりの、レッドソックスが勝てば、1918年からなんと86年ぶりの優勝となります。

 レッドソックスがこんなに長年優勝出来ていないのは、実は「バンビーノの呪い」があるからだ、と伝えられています。バンビーノとは伝説のプレーヤー、ベーブ・ルースのニックネーム(ベーブもバンビーノも「赤ちゃん」と言う意味)。レッドソックスで1914年から活躍していたベーブ・ルースは、6年間になんとチームを3度もワールドシリーズ優勝という栄光に導いた立役者だったのです。が、1919年、金に目がくらんだ当時のレッドソックスのオーナーがルースをヤンキースへとトレードしてしまいます。チームはそれ以来、一度もワールドシリーズで優勝していないのです。ベーブ・ルースという花形プレーヤーを物のように売り払ったレッドソックスは、彼の恨みを買ってしまったのでしょうか……。これが「バンビーノの呪い」となって今日まで語り継がれています。


ベーブな顔。

 カージナルスファンとしては、ここは是が非でもバンビーノの呪いにすがりたいところ(笑)。ということで奇妙なグッズをもらいました。ベーブ・ルースの顔のウチワ(?)。

 何はともあれ、この対戦。見逃せません! と、いうことでNarinari.com取材班もセントルイスで開催されているワールドシリーズの試合会場、ブッシュスタジアムに行ってきました! さすが、全米が注目する野球の祭典。スタジアムの外には中継車がたくさん来ています。


中継車がいっぱい

世界へライブ中継

 入り口を通り抜け、球場の通路を歩きます。試合開始1時間前なのに、もうすでに人、人、人……! しかも皆赤い服装です。それもそのはず、カージナルスもレッドソックスもチームカラーが「赤」。パッと見ただけでは一体どっちの応援をしに来ているのかわかりません(笑)。


赤い人だかりが

右も左も赤だらけ

どっちのファンなんだか

 人の波をかき分け、やっとのことで観客席に到着。まだ試合前なのでフィールドではグラウンド・キーパーたちが念入りに準備をしています。なにせこの日は朝からずーっと雨降りだったため、グラウンドもベストのコンディションとは言えません。なのに私たちが球場に着いた途端、ピタリと止んだじゃありませんか! 野球の神様も私たちの願いを聞いてくれたようですね。時間通りにゲームが始まりそうです。


バッターボックスもチェック

メディアの皆さん

 プレーボールまで、まだまだ時間がありますがファンの応援は始まっています。とはいえ、メジャーリーグでは日本のプロ野球のように「鳴り物」や、観客がシンクロして歌う応援歌などもありません。アメリカ人が好んで使うのは手作りのポスターや垂れ幕。これを高々と掲げてチームを応援します。思い思いのメッセージを描いた、オリジナリティーのある作品が今回もたくさんありました。


手作り感溢れます

キワドイメッセージも

高く掲げて応援を!

ホームランだ、有り難や!

 さて、いよいよ試合開始時刻が秒読みとなり、各チームの選手達がフィールドに整列しました。カージナルスの選手紹介では、もうはちきれんばかりの拍手と歓声です。普段なら肌寒く感じる秋の夜も、思わず半そでになりたくなるような熱気!


レッドソックスの面々

カージナルスのロースター達

田口選手を捜せ!

カージナルスのマスコットが仕切ります!

 いよいよ国歌斉唱の後、プレーボールです。観客はもう総立ち!


レッツゴー!

カージナルス!!

レッツゴー!!

 こうして始まったワールドシリーズ第3戦。ホームランで先制点を入れたレッドソックスがカージナルスの前に立ちはだかります。すでに第1戦、第2戦と制しているレッドソックスに、ここで負けるわけには行かないのです。しかし観ている方もあまりにも緊張し過ぎて、じっとしていられません……。そこで気を紛らわせるためにスタジアムを歩き回って見ることにしました。

 3階席に行くとそこには立見席があり、なんとものすごい数のファンでひしめき合っています。しかも、そこにはカージナルス・ファンとレッドソックス・ファンが仲良く肩を並べて応援していました。どちらのファンも自分のチームに勝ってほしいと願いつつも、明るく談笑しています。まあ考えてみればワールドシリーズはお祭り。楽しまなきゃ損ですよね!


こちらが立ち見席

ぎっちり詰まってます

敵同士でも一緒にビール!

両軍ファンの記念写真

 などと写真を撮っていたら、いつの間にかボストン 4−0 カージナルス。あらら……。カージナルスも強いがレッドソックスも強いです。結局この日の試合は4−1でレッドソックスが3勝目をあげました。ショック……。


ベーブさん、あなた一体どこ行ったの!?

 というわけで、カージナルスのファンは無念な気持ちを抑えつつ、球場を後にしました。もう後はありません。これからの試合はひとつでも落としたらカージナルスの負けです。


とぼとぼ…(涙)。

勝利チームファンに取材中

 ア・リーグ覇者のレッドソックス。ヤンキース相手に、どん底からカムバックしてここまで来ただけのことはあります。強すぎます……。しかし、私が球場の外で話を聞いたカージナルスのファンたちからは、まだまだポジティブな声が聞こえてきました。

 「3連敗から、這い上がってくれば良いのさ! 大番狂わせはどこのチームにあり得ること」
 「チームがあきらめない限り、ファンだってあきらめないよ」
 「明日から本番!」

 こんな声をかけ合いながら、カージナルスのサポーターは明るく帰って行ったのです。元気だなぁ。

 いかがでしたか? Narinari.comのワールドシリーズ・レポート。今回はテレビ中継ではあまり観られない、スタジアムで応援する観客たちにスポットを当てて取材してみました。とにかくカージナルス・ファンは礼儀が正しく、暖かい人たちが多いのですが、そのホノボノとしたスポーツを愛する心が、ワールドシリーズという下手すれば暴動が起きかねないイベントでも、やっぱり垣間見ることが出来たような気がします。レッドソックスのサポーターが、その何百倍という相手チームのファンに囲まれても、安心して楽しみつつゲームが観られるなんて、なんだかとっても素敵じゃないですか。スポーツマンシップにのっとっているのは選手だけではなく、スタンドにいる観客たちにも共通しているんだと、認識出来たような気がします。

※追記

 このレポートのあと行われたワールドシリーズ第4戦もレッドソックスが勝ち、4連勝でワールドシリーズを制してしまいました。カージナルスは見せ場なく敗退……。ガックリ。




 

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