「FBI」というお仕事

2004/06/24(Thu) 21:11

FBI特別捜査官とは

 日本に住んでいると、FBI(米連邦捜査局)の特別捜査官と聞いても、ハリウッド映画の登場人物などでしかなじみがなく、皆さんピンと来ないかもしれませんしれません。 

 「羊たちの沈黙」「ハンニバル」でジョディ・フォスターとジュリアン・ムーアが演じたクラリス、「Xファイル」のフォックス・モルダー(ディビッド・デュカブニー)とデイナ・スカリー(ジリアン・アンダーソン)、「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」のトム・ハンクス、「デンジャラス・ビューティ」のサンドラ・ブロックなどなど。映画やドラマでは強烈なインパクトを持つ主人公のFBI捜査官が、難解な事件に立ち向かう様子が描かれています。

 さて、このFBI特別捜査官。実際には一体どのような人たちなのでしょう? そのお仕事の内容をざっと紹介してみると……。

FBI特別捜査官の最重要任務とは、

アメリカとその市民を、テロリストの攻撃から守る
・アメリカとその市民を、海外からのスパイ活動などから守る
・アメリカとその市民を、インターネット等を利用した、テクノロジカルな犯罪から守る
・いかなる社会の腐敗を防ぐ
・市民権を保護する
・インターナショナル、及びインターステイト(複数の州が絡む事件)を防ぐ
・ホワイトカラー(仕事の上で社会的地位の高い人々)の犯罪の防止
・凶悪犯罪の防止
・連邦、州、国家、地方自治体、そして国際同盟国のサポート
・捜査に必要なテクノロジーの最新化

 これだけ並べただけでも、映画やドラマに出てくるFBI特別捜査官のイメージとは少し違うかもしれません。なにはともあれ、身の危険にさらされる、大変な仕事だということは判ります。

FBI特別捜査官になるには

 ところで、この捜査官になる方法ってご存知ですか? テロリスト相手に戦ったり、インテリジェントな犯罪者を追いかけたり……と、知力・体力共にエリート中のエリートが選ばれる仕事といった感じですよね。しかし、漠然としたイメージはあるけれど、実際にこの仕事への応募資格や、その選考過程ってどういったものがあるのでしょうか。

 実はこの特別捜査官の求人広告がFBIのオフィシャルページに載っているのです。それによると、FBIは常に特別捜査官の求人をしているらしいのですが、まず最低限、次の「資格」が無ければ応募することが出来ません。

アメリカ国民、又は北マリアナ諸島 (北太平洋西部の米自治領の島嶼)の国民であること
23才以上で、特別捜査官として初任務に就くまでに37才以上でないこと
任務地全てに派遣可能である事
視力がスネレン視力鑑定表において、裸眼で両方とも20/20(日本で言うところの1.0ぐらい)、または矯正視力にて片眼20/20以上、もう一方が裸眼で20/40(日本で言うところの0.5ぐらい)であること
色盲テストにパスすること
聴力検査にパスすること
四年制大学またはそれに準ずる学歴を所持すること
運転免許証を保持していること

 以上の全てが揃っていないと、書類審査の時点で、即効却下だそうです。さらにFBIが求める人材の重要スキルは、その時の国内・外の情勢(どんな事件が頻繁に起こっているか、等)によって時の流れと共に変わっていきます。よって、その必要スキルによって上記の応募資格の他にも、その時々により内容が若干違ってくるのです。

2004年6月現在、FBIが求めているのは……

・会計・ファイナンス関係の学位保持者、CPA(米国公認会計士)、又は2年以上これに関連した職業経験のある者
・ コンピューター・サイエンス、又はITスペシャリスト
・ 外国語に担当である者(アラビア語、日本語など限定がある)
・ スパイ活動経験者
・ 法律関係の職種経験者
・ 元警官又は捜査官
・ 元軍事関係者
・ 物理、化学、生物学のエキスパート

 などで、このどれか一つに属さなければならないそうです。もちろん、個々の応募資格のカテゴリにも細かい規定が定められており、特別捜査官という仕事は、とても敷居の高い職業だということがわかります。

体力テストも待っている

  さて、このような厳しい応募規定全てにパスしたとしても、次には体力テスト、そして素行テストが待ち構えています。体力テストに関しては、下のチャートを見ていただけると判りますが、これらの種目の総合点が12ポイントないといけないそうです(個々のテストでも最低1ポイントは必須)。

腹筋、一分間
  女性 男性
ポイント 回数 回数
-2 29 以下 31 以下
0 30-34 32-37
1 35-36 38
2 37-40 39-42
3 41-42 43-44
4 43-46 45-47
5 47-48 48-49
6 49-50 50-51
7 51-52 52-53
8 53-54 54-55
9 55-56 56-57
10 57 以上 58 以上
300メートル走
  女性 男性
ポイント
-2 67.5 以上 55.1 以上
0 67.4-65.0 55.0-52.5
1 64-9-62.5 52.4-51.1
2 62.4-60.0 51.0-49.5
3 59.9-57.5 49.4-48.0
4 57.4-56.0 47.9-46.1
5 55.9-54.0 46.0-45.0
6 53.9-53.0 44.9-44.0
7 52.9-52.0 43.9-43.0
8 51.9-51.0 42.9-42.0
9 50.9-50.0 41.9-41.0
10 49.9 以下 40.9 以下
腕立て伏せ
  女性 男性
ポイント 回数 回数
-2 4 以下 19 以下
0 5-13 20-29
1 14-18 30-32
2 19-21 33-39
3 22-26 40-43
4 27-29 44-49
5 30-32 50-53
6 33-35 54-56
7 36-38 57-60
8 39-41 61-64
9 42-44 65-70
10 45 and over 71 and over
中距離走(1.5マイル)
  女性 男性
ポイント
-2 15:00 以上 13:30 以上
0 14:59-14:00 13:29-12:25
1 13:59-13:35 12:24-12:15
2 13:34-13:00 12:14-11:35
3 12:59-12:30 11:34-11:10
4 12:29-11:57 11:09-10:35
5 11:56-11:35 10:34-10:15
6 11:34 -11:15 10:14-9:55
7 11:14-11:06 9:54-9:35
8 11:05-10:45 9:34-9:20
9 10:44-10:35 9:19-9:00
10 10:34 以下 8:59 以下

 素行テストについては、犯罪暦などのバックグラウンド調査、ドラッグを使用していないかを調べる尿検査、さらに嘘発見器(ポリグラフ)テストにもかけられるそうです。ちなみに、アメリカ国民でも、他の国の国籍も同時に所持している場合はそれを破棄し、アメリカに忠誠を誓う云々の宣誓書にサインしなければなりません。

FBIアカデミーでさらに鍛えられる

 さて、これらの厳しいテストに晴れてパスしたら、今度はバージニア州にあるFBIアカデミーで特別捜査員の候補生として、トレーニングに参加することが出来ます。ここでは研修のための授業が4か月ほど。しかし、候補生観察期間として、最低でもまだ1年(通常は2年)はエージェントとして任務に付くことは出来ません。

 しかもこの4か月の間に行われるトレーニングはかなり厳しいものらしく、脱落者も後を絶たないとか……。具体的な授業内容は銃の使い方や、護身術のほかに、捜査に必要となる数々のインテリな知識もキッチリ教え込まれるそうです。

 こうして厳しい選抜プロセスとトレーニングの結果、エリート中のエリートたちとしてFBI特別捜査官が誕生します。あの、FBIと大きく書かれたIDカードを片手に、聞き込み捜査などをするんでしょうねぇ…。


FBIのIDカード(イメージ)




 

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