ヨーロッパ最大級の原子力発電所が、“予期せぬ侵入者”で稼働停止を余儀なくされた。

フランス北部ダンケルクとカレーの間にあるグラヴリーヌ原子力発電所は8月12日、「大規模で予測不能な」クラゲの群れが“襲来”。海水取水システムを詰まらせ、完全停止となった。
同発電所は北海の水で原子炉を冷却しており、クラゲが侵入したフィルタードラムが処理能力を超えたことで、深夜直前に原子炉4基が自動的に停止、5基も数時間後に停止する事態となった。
1基あたり900メガワットの電力を生産することから、地域のエネルギー供給は重大な打撃を受けることとなったが、従業員、環境、施設自体に脅威を及ぼすことはなかったとフランスの大手電力会社EDFが発表している。
今回クラゲはポンプ自体を損傷させることはなかったものの、再稼働前にポンプを撤去しフィルターを清掃する必要があるという。
グラヴェリン地域では近年、近隣のビーチに同様のクラゲの群れが打ち上げられる事例が複数報告されており、専門家は地球温暖化による海温上昇や外来種の拡散が原因との見方を示している。
アメリカ海洋大気庁(NOAA)の海洋生物学コンサルタント、デレク・ライト氏はこう説明する。
「水温が上昇するとクラゲの繁殖速度が速まり、北海のような地域が温暖化していることで、繁殖の窓がますます広がっています。クラゲがタンカー船に便乗し、一つの港でバラストタンクに入り、地球の反対側で排出されることもあります」
「原子力はクリーンだとよく言われてますが、熱汚染の予期せぬ影響については考えられていません」