ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの顔が、死後約200年が過ぎた今、驚くほど細部まで再現されることとなった。「運命」が入った「交響曲第5番」や「月光ソナタ」といった曲で知られるドイツ生まれの作曲家の顔が、最先端の3Dと頭蓋骨スキャンによって蘇った。

“不機嫌そうな厳しいベートーヴェンの顔つき”を再現したプロジェクトを率いた、ブラジル出身の法医学、獣医学の世界でも活躍する3Dデザイナーのシセロ・モラエス氏は「この顔に私は威圧感を感じましたね」と話す。
ちなみに天才的音楽家ベートーヴェンについて、イギリス人指揮者マーク・ウィッグルスワースは以前、「イライラして、整理整頓ができない、不器用で無作法、人間嫌いだった」と評していた。
今回、モラエス氏は、1863年撮影のベートーヴェン(1827年没)の頭蓋骨の写真と、ドイツのボンにあるベートーヴェン・ハウスから提供された1888年の測定データを使用。こう説明している。
「顔の輪郭は、頭蓋骨だけを参考にしました。まず頭蓋骨の写真から正面と側面の2Dアウトラインを作成し、写真のプロポーションに合うよう調整したバーチャルドナー断層撮影を使い、頭蓋骨を3Dでモデリングしました。その後、現存するヨーロッパ人のデータに基づいて軟部組織の厚みマーカーを追加、鼻を投影し顔の輪郭をトレースしたのです。この投影を全て補間し基本的な顔を形成しました」
そして、1820年の有名な肖像画をもとに服装と髪型を追加、最後にAIを使い最終的な形に磨き上げたところ、ベートーヴェンの生前に製作されたライフマスクと高い互換性が得られる結果となった。
モラエス氏はこう語る。
「彼の革命的創造性、耳が聞こえなくとも作曲する回復力、集中力、問題解決能力、難しい性格にも関わらず旺盛な生産性を私は分析しました。彼の人生について詳しく知ると、自分自身の行動と似ていることに気づき感動しました。私には幸運にも心理的なサポートがあったことで、自分の苛立ちに対処することができました。しかしべートーヴェンは混沌とした世界に己の力で立ち向かい、作品に託し、それが彼に実存的な充足をもたらしたと私は考えています」