“氷上の哲学者”町田樹がスケーター引退

2018/10/07 03:15 Written by Narinari.com編集部

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フィギュアスケート男子ソチ五輪(2014年)代表で、“氷上の哲学者”と呼ばれた町田樹(28歳)が10月6日、さいたまスーパーアリーナで行われたアイスショーをもって、スケーターを引退した。また、改めて公式サイトを更新し、ファンに引退を報告している。

6日付けで更新された「応援して下さる皆さまへ」の全文は次の通り。

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 私、町田樹は、本日2018年10月6日をもちまして、フィギュアスケートの実演家を引退致します。私の活動をご理解くださり、いつも様々な形で応援して下さる皆様に、心から感謝を申し上げます。
 今、25年間のスケーターとしてのキャリアをしみじみと顧みると、様々な感覚や記憶が怒濤の勢いで呼び起されてきます。浮き沈みの激しかった競技者時代に、いつどんな時でもエールを送り続けてくださった方々がいてくださったからこそ、過酷で先が不透明な競技者としての道を最後まで歩みきることができたと思います。またプロスケーター時代には、プレゼントやお手紙を一切お断りするなど独自の活動方針をご理解くださり、温かく見守って下さいましたおかげで、制作陣Atelier t.e.r.mとともに自らの理想とするフィギュアスケートの創作と実演を果たすことができました。

 心から、ありがとうございました。

 私の引退を心から惜しんで下さる方々のお気持ちは、痛いほど伝わっております。ただ、「身体」と「時間」は有限です。とりわけ、スケーターとしての「身体」は儚く、その生命力は烈火のごとく激しく燃え盛る代りに、閃光や流星のように刹那に消耗してしまうという宿命を背負っています。私はこれまで、数多くの方々からお力添えを頂きながら、「総合芸術としてのフィギュアスケート」を、自らの身体が備えている全ての能力を駆使してお届けできましたことを、誇らしく思います。
 私の理想とするフィギュアスケート ―― すなわち「総合芸術としてのフィギュアスケート」は、観客の皆様があってこそ、初めて命が吹き込まれます。なぜならば、この営為は自分以外の他者に向けられた表現行為なのですから。ですから、ぜひ今後とも、観客の皆様そしてファンの皆様には現役選手、プロスケーターたちを応援して頂き、皆様のお力でフィギュアスケートという「ブーム」を「文化」へと育んで頂きたいと、切に願っております。私自身も今後、実演家とは別の形で、自らの「身体」と「時間」を「総合芸術としてのフィギュアスケート」に捧げていきたいと考えております。
 学問の道にて精進する私を、なお見守って下さいますなら洵に幸いです。

 また必ずどこかでお会いしましょう。

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町田は早稲田大学 大学院スポーツ科学研究科博士課程に所属。今年4月からは慶應義塾大学環境情報学部と法政大学スポーツ健康学部で非常勤講師も務めている。

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