村上龍名作の初舞台化が決定、1980年作「コインロッカー・ベイビーズ」。

2015/10/05 18:31 Written by Narinari.com編集部

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1980年に発表された村上龍の小説「コインロッカー・ベイビーズ」が、2016年6月、初めて舞台化されることが決定した。

発表当時、実際に起きたコインロッカー幼児置き去り事件を題材にした本作は、世間に衝撃的なセンセーショナルを巻き起こし、第3回(1981年)野間文芸新人賞受賞を受賞。当時は近未来のSF小説のようにもとらえられていたが、現在改めて読み返してみると、今日の若者の“魂の叫び”のようにも感じられる。

コインロッカー・ベイビーズとは、コインロッカーに置き去りにされた本作の主人公であるキクとハシ2人のことを指し、彼らを主軸に現代の若者を痛切に批判。密閉されたコインロッカーで何も出来ない、何をしても無駄に終わってしまうという、無力感。それは葛藤や屈服、反抗、逃走……そうした姿で今日の若者を表わす、激しくもせつない物語だ。

これまで映像化もされていない本作だが、初の舞台化で主人公ハシとキクを演じるのは、橋本良亮(A.B.C-Z)と河合郁人(A.B.C-Z)。2人のキャスティング理由について、本作プロデューサーは、「橋本さんと河合さんは、お芝居と歌の表現力が長けていて、作品のメッセージにある、若者の持つエネルギー、純粋さ、可能性を、二人が秘めていると感じました。さらに、透明感あふれ、この役を演じる役者さんとして、最もふさわしい、と実感しました」と語っている。

橋本は「村上龍さん原作のコインロッカー・ベイビーズが2016年6月に幕が上がります。僕はハシ役でやらさせていただきます。僕の名前が橋本なので嬉しいです。このロングセラー小説を自分なりに自信をもってみなさんを満足出来るように橋本良亮頑張りたいと思います」とコメント。

また、河合も「大ベストセラー小説のコインロッカー・ベイビーズに出演できる事に今からワクワクしてます! 僕の演じるキクはもの凄く強いキャラクターで想像もしたことのなかった人物像です。でも、魅力的なので、今から楽しみです!今までの河合郁人からは想像できないくらい、入り込んで役作りしたいと思っていますので、お楽しみに!」と意気込みを語っている。


☆原作のあらすじ

コインロッカーに捨てられた子供たち、その中でかろうじて生き残った二人の赤ちゃん。キクとハシは施設で育てられた後、双子の兄弟として九州の離島に住む夫婦のもとで暮らすことになりました。

感受性が強く優しいハシは、頭よりも身体を先に動かすキクの影に隠れる大人しい少年でした。しかし、ある時を境に彼は世界中のあらゆる音を聞こうとテレビなど様々な音源に耳を傾けるようになり、その他のことへの関心を失ってしまいます。なぜ、彼がそこまで音にこだわるようになったのか?

彼ら二人は、物心つく以前、暴力性を制御できない問題児でした。そこである精神科の研究者が心臓の鼓動をもとにしたリズム音によって治療を行い、それを抑えることに成功。そのおかげで彼らは社会に適応できるようになりました。しかし、ハシはかつて聞いたその音のことを思い出し、それが自分の母親と結びついていると考え、母親を探しに東京へと旅立って行きます。その後、東京でハシは様々な体験をした後、歌手としてデビュー。その独特の歌唱法によりカリスマ的な人気を獲得してゆきます。

陸上の棒高跳びで活躍していたキクは、家出したハシを追って東京へ母親とともに出発。母親の死後、彼はひとりぼっちになりますが、モデルとして活躍する不思議な少女アネモネと知り合い、二人で世界を破壊するため、謎の物質「ダチュラ」を探す約束をします。しかし、歌手としての話題つくりのために仕組まれた実の母親との対面からハシを救い出そうと、キクが銃を持って会場に乱入。この時、その女性がキクの母親だったことが明らかになり、混乱の中、キクは自分の母親を殺してしまいます。

しかし、刑務所に入ったキクは、ダチュラを探すため海へと向かう計画を立てていました……。

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