ピース又吉が喜びの“ピース”、芥川賞受賞連絡時は「手が震えました」。

2015/07/17 05:57 Written by Narinari.com編集部

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お笑いコンビ・ピースの又吉直樹(35歳)が7月16日、小説「火花」で第153回芥川賞を受賞し、喜びの会見を行った。

まず、受賞の感想を聞かれ「すごくビックリしたんですけれど、とにかく嬉しいです」と語り、第1回芥川賞の際、敬愛する太宰治が欲しくて仕方がなかった賞を又吉が(80年の時を経て)受賞したことについてはどう感じるかという質問には、「僕が小説を読み始めたのは芥川、太宰からでした。太宰が(芥川賞を)取れなくて川端康成に手紙を書いた(というエピソード)とかは聞いてはいました。時代も違うのでどうかわからないですけど、僕はテレビとかで太宰が好きとか勝手なことを言うてたまに申し訳ない気持ちになるんです。その時は、三鷹のほうにお墓参りに……今月は2〜3回行ったんですね」と謙遜しながら答えた。

また、又吉が太宰に憧れて本を読み始めたように、今度は又吉に憧れて小説を読む人たちへのメッセージを求められると、「ほかにも面白い小説はたくさんありますから。好き嫌いもあるでしょうし、他の方の作品を読んで小説を書きたいと思う人もいると思うので、僕のを読んでこの先小説を読むのをやめようという責任はどうか……。僕でジャッジしないで欲しいというか(笑)」と笑いを誘いながら、「1人目として読んでくれるのは嬉しいですけど、2〜3冊読んだ時は難しくてわからんこともあるんですけど、100冊読んだら本を好きになると思うので、そこまで頑張って読んで欲しいですね」と呼びかけた。

そして「芥川龍之介が生きていたらかけてもらいたい言葉はあるか」と聞かれると、「僕みたいな髪型のヤツ、嫌いやと思うんですよね」とつぶやきつつ、「ベートーベンを――僕は似合うてんなと思ったんですけど――天才ぶってると書いていた印象が深い。厳しい一面、言われればそうやと思える説得力もある人なので、“又吉のこの感じ……お前やってるんちゃうか?”って言われそうな気がします」と返答し、「誉めてもらえる自信ですか? いやいや(笑)、ないですね」と笑顔を見せた。

また、ダブル受賞となった羽田圭介さんが自身の会見で「『火花』はこれまで3回、メディアでオススメとして紹介してますので、オススメの本が受賞してよかったなと思います」とコメントしていたことを受けて、「プロの作家さんに偏見なしに扱っていただけるのは、すごく嬉しいですね」と喜びを露にした。

名誉ある賞を受賞したことによって、小説家としての今後の動向にも注目が集まるが、本人は芸人というスタンスを全く崩さず、「あくまで、これまで通りです。芸人を100でやって、それ以外の時間に書くことをやってきたので、その姿勢は崩さんようにしようと思っています」と冷静に返答。

その理由をたずねられると「どちらにとっても、それがいちばんいい。毎月(自分の主催する)ライブをやってるんですけど(※月1回、東京・ヨシモト∞ホールにて『実験の夜』を開催)、それをやりながら気付くこととか、お笑いにできひんことは……そのまま小説にはならないんですけど、文章を書くときの1文目になることもあるので。散歩をしながらとか走ったりしてるときに、頭の中に出てくる言葉から文章を書いたりすることもよくありますけど」と、お笑いという本職でできないことを、小説というカタチで表現していることを丁寧に説明した。

小説を書いてみて「広い表現やいろんなことができるんやと感じて、“あ、面白いんやな”と思いました。急に書きたくなって書いてみましたけど、(執筆中は)楽しかったですね。小説に注目していただいたことで、街を歩いていても“『火花』読みましたよ”と声をかけてくださる方が多くなって。“死神、死神”って言われていた昔とは、ちょっと変わったかなという感じです」と語ると、会場から笑いが起こった。

お笑いと小説、それぞれの表現で感じる自由さと不自由さについては、少し考えつつ「お笑いは割と何をやってもいいというのはあるんですけど、めちゃめちゃ子供みたいなことを言えば、自分が瞬間的に2〜3人になれたら幅が広がるなぁというか。人間なので、自分の体と声で表現しないといけない……映像だとそこもクリアになるのかもしれないですけど、そんなに(お笑いに対しての)不自由はないかなと思います。まぁ、お笑いの場合はお客さんが笑ってへんなと思ったら、やり方を変えたりできますけど、小説は変えられないですもんねぇ。その違いはあるのかなと思います」と考えながら返答。今後、芸人として不都合はないかという危惧にも「注目していただくのは、芸人にとって有り難いこと。コンビで活動しているので、不都合は感じないし、ないです」と答えた。

現在、64万部発行されていることを受けて、「ミリオンセラーを狙えるのでは?」という質問には「書いているとき、そんなイメージはなく、作品と向き合っていただけなんですけど、書き終わると“せっかく書いたものをいろんな方に読んでもらいたい”という気持ちが湧いて、どんどん読んでもらえて。先ほども言いましたけど、僕のを読んで、別のも読んで、本を好きな人が増えたらまた楽しくなるなと思います。『火花』は芸人のことを書いてるんで、若手が劇場にたくさん出ていますし、(そういうシーンが)盛り上がればいいなと思います」と後輩へ向けての、思いやりのある言葉もあった。

また、会見後には、又吉のみでマスコミ向けの囲み取材も行なわれた。発表はホテル内のお店で、マネージャーと編集者と一緒に待っていたという又吉。「ドキドキしながら、どうなんかなぁと緊張していた。(携帯電話が鳴ったときは、という質問には)担当編集者からかかってきた場合、あかんかったこということやと聞いていたので、(電話の画面を)裏返しにしていて。まだまだ未熟ですし、無理だと思っていたので、(受賞を聞いたときは)手が震えました。手ぇ震えてんな、(会見では)震えへんようにせなと」と興奮しながらも自身を落ち着かせていたという。

選考委員にも挨拶したそうで「おめでとうという言葉のほか、厳しい言葉もあったんですけど、昔から読んでいた先生方ばかりなので、ちゃんと本気で読んでいただいたんやなと感動しました」と話しつつ、「ちょっとまだ状況がようわかってへんというか、ふわふわした感じです」と実感がまだあまりないようだ。

また、芥川賞の賞金100万円の使い道を聞かれると「有り難い賞金なので、貯金しないで美味しいものでも食べましょうかね。食べたことのない料理とかを後輩2人、同居してるパンサー・向井とジューシーズ・児玉と」と答えつつ、「綾部さんは?」と聞かれると「綾部は好き嫌いが激しいので……。食うたことのないものを食おうとは思わないと思う。綾部にはこの前2人きりのときに、“時計を買ってくれ”とはっきり言われました」と返して笑いを誘いつつ、「次回、2人でトークライブするときはお祝いの会にできればと思うので、お客さんがいっぱいになればいいと思います」と語った。

受賞後第1弾作についての期待も高まるが、「せっかくなら面白いものを書いていきたいので、どれくらいの時期に出せるかわからないですけど、恥をかいてもいいので書いていこうと思います」と、今後の執筆についても意欲をのぞかせていた。

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