「井戸転落事故で命落とす子をなくしたい」想い胸に男性が救助器具開発。

2014/07/22 11:24 Written by ナリナリ編集部

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インド南端に位置するタミルナードゥ州では、以前から使われなくなった井戸に子どもが転落する事故が後を絶たないという。そして、細く深い穴に落ちた子どもを救うのは容易ではないため、命を落とすケースが多いそうだ。そうした状況に心を痛めた配管工のある男性は、落ちた子どもを迅速に助け出すための道具開発に10年以上前から着手。改良を重ね、最近になって完成させた最新式の器具が今年4月に転落事故で活用され、3歳の男の子を助け出すことに成功した。この結果を受け、地元消防当局がほかの地域でも使えるように、多くの場所に配備したいと前向きに検討しているそうだ。

インド放送局NDTVやインド紙ザ・ヒンドゥーなどによると、井戸に落ちた子どもを助けるための器具を開発したのは、タミルナードゥ州セニで配管工をする傍ら、職業学校で講師も務めている40代前半の男性。彼は2003年、同州セーラムで子どもが深さ約200メートルの井戸に落ちて死亡した事故の話を知り、機械を作る能力を持つ知り合いたちに声を掛け、井戸に転落した子どもたちを救うための器具を作ろうと、開発に着手したという。

というのも、地下水を利用するのが一般的だというタミルナードゥ州では、多くの井戸が点在。しかも、穴が小さいものも数多く存在しているそうだ。今年4月には同州で3歳の女の子が直径約9インチ(約23センチ)の井戸に転落し、地質などの問題もあって救出活動が難航。19時間後に助け出されたものの、窒息状態に陥っていた女の子は死亡する事故もあったという。この事故を報じたインド紙タイムズ・オブ・インディアによれば、同州で子どもが井戸に落ちて死亡した例は「この6年間で8件目」。安全対策がなされないまま、使われなくなって放置される井戸が少なくないことも、事故が相次ぐ原因の1つと見られている。

そこで男性らは、狭い井戸に入れられて、子どもをしっかり“手”で掴んで迅速に助け出せる機器を作ろうと開発作業に没頭。やがて、井戸の中に入れて“手”で掴んだ子どもを本体とともにロープで持ち上げる長さ約1.2メートル、重さ20キロの“初号機”を足がかりに、2006年には「空気ピストン」を備え、井戸の深さも約30メートルから約150メートルまで対応できるようになった長さ約2.7メートル、重さ30キロの“2号機”を作り上げる。そして、実用的に使えるようさらに改良を重ねた結果、最近電気モーターや小型カメラなどを付けて子どもの様子を見ながら対応でき、最高300メートルまで入れられる長さ約1.2メートル、重さ5キロと大幅に軽量化した“3号機”を完成させた。

その性能は、すぐに実際の事故現場で示される。4月14日、同州の村で3歳の男の子が井戸に転落した事故で、彼らが作った“3号機”が活用され、見事救出に成功。地元消防当局は彼が作った器具を「取り入れたい」と話していて、男性自身も「これは国に捧げたものだ」として、特許申請をせずに大量生産やさらなる改良をしてくれる人が現れることを期待しているそうだ。彼の意向を受けて、まずは彼が教えている職業学校が器材購入の援助を始め、普及に向けた取り組みに協力しているという。

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