先日、高速道路を走行していた米国のある男性は、後続車から火が出ていることに気がついた。車を路肩に止め、すぐに問題の車へと向かった彼だったが、火に包まれた車は鍵もパワーウィンドも働かなくなっていて、運転していた男性が中に閉じ込められた状態だったという。すると、助け出そうと必死の彼は、駆け付けた消防士ですら驚いたという“火事場の馬鹿力”を発揮し、中の男性を無事に助け出したそうだ。
米紙ミネアポリス・スタートリビューンや米放送局CBS系列WCCO-TVなどによると、驚異の行動で称賛の声を集めているのは、ミネソタ州ウッドベリーに住む52歳の男性ロバート・レンニングさん。6月29日午後6時半過ぎ、知人女性を乗せて同州ミネアポリスの高速道路上を運転していた彼は、バックミラーで後ろを走っていた男性の車の下から火が出始めていることに気付いたそうだ。そこで後ろの男性に危険を知らせようと、彼は自分の車をわざと減速し、同時に女性が窓から緊急事態をアピールして、2台の車は約60メートルの距離を開けて路肩に停まったという。
その後、急いで問題の車に近づいたレンニングさんだったが、男性の車はわずかの間で「炎と煙に包まれた状態」に。そして、車内の状態を確認するレンニングさんの前で、助手席の窓を必死で叩き、助けを求める男性の姿があったという。レンニングさんはすぐにドアに手をかけたが、鍵はかかったまま。実は、運転手の男性も事態に気付いて停止してすぐに飛び出そうとしたものの、何らかの問題で「自動的にロックした状態」となり、パワーウィンドも作動しなくなったそうで、男性は煙が充満する車内で「死ぬかもしれない」と半ば諦め気味になっていたという。
しかし、窮地に陥ってる男性を目の前にして「何とかしなければ」と必死だったレンニングさんは、ここから「記憶に残っていない」という火事場の馬鹿力を発揮。ドアが開かないと判断するや、彼は助手席側のドアフレームと車体の隙間に「指を突っ込み」、足も使って強引にドアを開けようと試みたという。すると、ドアの上部分が曲がり、その影響で窓が「粉々に」割れたそうで、そこから差し入れられた彼の手によって男性は助け出され、無事車外へと避難できたそうだ。
その後、2人は駆け付けた救急隊に治療を受けたが、男性は軽い切り傷があったものの、レンニングさんは無傷だった。
そして、経緯を知った消防隊員が「超人的な力を発揮した」と称賛した救出劇に注目が集まり、地元ミネアポリス・スタートリビューン紙の取材に対して「私はちょっと太った、単なる空軍隊員にすぎない」と照れる様子を見せたレンニングさん。ただ、事故当時については「よく分からない」「時間が止まったようだった」と話しており、必死すぎたために、あまり自分の記憶の中には残っていないようだ。
一方で助け出された男性は、当日の夜には妻とその両親、娘が待つ家へと戻れたそうで、彼の無事を家族全員で喜んだそう。男性の妻は、「私たちがまだ家族としていられることを、ずっと彼に感謝し続けたい」とコメント。男性も、後にレンニングさんへ直接電話で謝意を伝え、近いうちに酒を酌み交わす約束をしたという。