人生最後に願った“遠足”叶う、森の空気味わい「終始微笑んでいた」。

2014/06/25 19:49 Written by Narinari.com編集部

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やりたいことをすぐにやれるのは、元気だからこその特権。たとえば風邪で寝込んだりするなど、少しでも体を自由に動かせなくなったときに、そのありがたみに気付く人も多いことだろう。それが死の淵に立たされたほどの状態になってしまっては、もはや小さな願望すら叶えられる見込みは少ないかもしれないが、数年間にわたってホスピスで生活していた米国のある男性は、彼の希望を知った看護師や聖職者たちが力となり、一番したかったことを死の直前に体験できたという。大いに喜んだ彼のその時の写真と説明が最近ホスピスのFacebookで紹介され、欧米で話題を呼んでいる。

米放送局ABCやCBS系列KREM-TVなどによると、話題になっているのは、6月9日にワシントン州カークランドにあるエバーグリーン・ホスピスが、Facebookで紹介した1枚の写真。今年3月26日に、救急車のストレッチャーに乗せられた男性が、連れて来た聖職者や消防士に囲まれながら、森の空気を存分に味わって楽しんでいる様子を写したものだ。この“遠足”が実行されたのは、男性が看護師に願いを口にしたことがきっかけだったという。

ストレッチャーで横になっている男性は、2008年に病気を患って以来、同州エドモンズの療養所で寝たきりの生活を送っていた62歳のエドワード・ライスさん。3月のある日、彼は週3回来てくれていた、エバーグリーン・ホスピスの女性看護師に「外の世界へ戻りたい」と話したという。昔は森林測量士として、外で過ごす時間が当たり前だった彼にとって、ずっと部屋の中から出られない生活が続く当時の状況は「辛かった」ようだ。

そこで彼の願いを知った看護師は、ホスピスにいる聖職者の男性に何とかできないかと方策を相談。すると、聖職者は仲間を伝って地元の消防署へと話を持ち掛け、ライスさんを森への“遠足”に連れて行けるよう、協力を取り付けたそうだ。そして3月26日、ライスさんがいる療養所に、看護師と聖職者の他に救急隊員を乗せた消防車が到着。彼をストレッチャーに乗せて連れ出すと、療養所近くの森林公園へ向かったという。

その最中に撮影されたのが、今回紹介された1枚の写真。「3時間のツアー」でゆっくりと散策できたライスさんは、隊員が持ってきてくれたスギの木の破片から匂いを嗅ぐなど、久々に森の空気を存分に味わい、「終始微笑んでいた」という。願いを叶えてくれた人たちに「信じられないほど感謝していた」というから、彼にとっては余程嬉しい出来事だったようだ。そして、それから20日間ほど過ぎた4月13日に、彼はこの世を去った。

こうした説明と共に紹介された写真は、欧米メディアで広く注目を集めることに。最後の願いが叶ったライスさんに対しても、実現に向けて尽力した人たちに対しても「素晴らしい」と称賛するコメントが多数寄せられているほか、「いいね!」と反応した人の数も約3万8,000人に上っている。ライスさんも、きっと“遠足”の3時間があったおかげで、晩年溜まり続けた辛さを少しばかり緩和して、天国へ旅立てたに違いない。

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