「人生山あり谷あり」とはよく言うが、米国では先日、たった1週間の間にあまりに激しい山と谷を経験したカップルがいるそうで、話題を呼んでいる。このカップルは、一緒に住んでいた自宅が4月中旬に火災に遭い、着の身着のまま逃げ出した2人や家族は無事だったものの、家は全焼。ところが、ほぼ全てが焼失した家の中から、彼らにとって大事な宝物だけが焼けずに見つかったことがきっかけとなり、火災事故から6日後、2人は全焼した自宅前で結婚式を挙げたそうだ。
米放送局ABCやCBS系列WFSB-TVなどによると、話題になっているのはコネチカット州レッドヤードに住む、ブライアン・オズボーンさんとミーガン・ハンリーさんのカップル。2人は4月14日、「全く違う視点から人生を考えさせられた」と話すほどの大きな出来事を経験した。オズボーンさんの子ども2人と4人で暮らしていた自宅が火災に遭い、家全体が燃えて「ほとんどの所有物も焼失」する損害を被ったという。
命は全員助かったものの、持ち出せたのは着ていた服だけ。しかし、鎮火して家の中が灰の山となった自宅を前にしたオズボーンさんには、燃えて無くなったのかと1つだけ気になったものがあったという。それは、ハンリーさんには内緒で数か月前に購入し、「来たるべき時を待って」彼女に渡そうと隠していた婚約指輪。ほぼ全ての物が焼け焦げてしまった状況で、当初は指輪すらも焼失したと彼も思っていたそうだが、もしかしたらとの思いもあったようで、消火活動を終えた消防士に隠していた場所を伝え、「指輪を見つけに中へ探しに行ってほしい」と頼んだそうだ。
そして、再び中へ入って彼の寝室を探した消防士は、上面が火で溶けながらも残されていた指輪ケースを見つけ出してオズボーンさんのもとへ。中を確かめてみると、そこには全く影響を受けずにきれいな状態のままだった指輪があった。その瞬間は「言葉がなかった」というほど、唯一無事に残された指輪にある種の運命を感じ、即座に結婚を決意したという2人。火災という悲劇の過去にとらわれることなく、「新たな始まり」に踏み出すとの強い気持ちを表すためにも、彼らはあえて結婚するきっかけになったとも言える、焼けた自宅前で結婚式を行おうと考えた。
それから1週間ほど経った4月20日、知人や消火活動してくれた消防士など約40人に囲まれ、即席の結婚式を挙げたオズボーンさんとハンリーさん。ドレスやタキシードではなく、火災発生当時の服装で式に臨んだのも、大きな損害を被ったばかりということもあるだろうが、2人の結婚にとって自宅とその服装は共に象徴的なものだったからだという。
火事から結婚式まで、「想像すらしなかった」激動の1週間を過ごしたと話すのはハンリーさん。今回の経験から「次に起こる出来事など決して分からない」との教訓を学んだオズボーンさんは、人にとって大事なのは物ではなく“心”だとも話しており、起きてしまった火災にめげず、前向きで幸せな結婚生活を送ろうと考えているようだ。