排泄をトイレで行うという行動は、日本なら至極当たり前だが、さまざまな事情から世界にはまだ当たり前となっていない人たちが多くいる。その1つの国とされるのが、インド。IT技術を中心に目覚ましい発展を遂げている一方で、未だトイレがないために外で排泄する人も少なくないとされ、子どもたちの健康に深刻な影響を与えている衛生環境が大きな問題になっているそうだ。そこで国連児童基金(ユニセフ)のインド協会が、先頃トイレを使う大切さを子どもたちに広報する“うんち”を主人公にしたアニメを制作し、世界でも注目を集めている。
インド紙ザ・ヒンドゥーや英紙インディペンデントなどによると、ユニセフ・インドは今年はじめから「Poo2Loo(トイレで排泄を)」と銘打ったキャンペーンを展開。そのキャンペーンサイトによれば、インド国内では、総人口の約半分にあたる「6億2,000万人」がトイレを使わず、外で排泄を行っているのが現状だという。そのため、毎日「6,500万キロ」にもおよぶ排泄物が野原や川などに出され、放置された排泄物が原因と見られる感染症などにより、子どもたちの健康に大きな影響を与えているそうだ。
実際、インドでは毎年20万人以上の子どもたちが、衛生問題による下痢を起こして命を落としているとの動画も投稿しているユニセフ・インド。こうした危険を子どもたちから遠ざけるためにも、広く国民へ外で排泄する「悪影響の認識を広めたい」と考えたというユニセフ・インドは、「Take The Poo To The Loo(うんちをトイレに連れてって)」(//www.youtube.com/watch?v=_peUxE_BKcU)というアニメ動画を制作し、2月14日にYouTubeへ投稿した。
4分ほどの動画は、街中にのさばっている大量の“うんち”が主人公。うんちたちが匂いや存在で人間を追い詰めるシーンが描かれるなど、排泄を外でしないように訴えるメッセージが込められた内容だが、時に英語やヒンディー語の「ボリウッドスタイル」な歌に合わせてうんちたちが踊るシーンもあり、ユーモラスで見やすい印象だ。最後は、人間たちが作った大きなトイレを会場にしたパーティーのポスターを街中に張り、呼び込まれたうんちたちがトイレの中へと次々と飛び込んでいき、清潔な街になるというストーリーになっている。
この動画制作の意図について、ユニセフ・インドのマリア・フェルナンデス・ルイスさんは、インド国民に対して「重要な問題について意見交換を始めた」とコメント。多くの人の習慣として根強く残る外での排泄が起こす悪影響を認識してもらい、トイレを作り、使うことの大切さを広く知ってもらいたいと考えているそうだ。まずは動画を作ったユニセフ・インドでは、次のステップとしていろいろな学校を周って広報活動を行う予定としており、インドでのトイレ利用促進に向けて、今後も積極的にキャンペーン展開を図っていくという。