本格ラーメンにパリッ子舌鼓、「PARIS RAMEN WEEK ZUZUTTO」レポート。

2014/01/29 18:07 Written by Narinari.com編集部

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欧州だけでなく、世界の食文化の中心地であるフランス・パリ。そこで1月20日から6日間にわたり、クールジャパン事業の一環としてラーメンの魅力と食文化を広める「PARIS RAMEN WEEK ZUZUTTO」が開催された。日本から有名店が“参戦”したこのイベント。現地でも大きな反響を呼んでいたが、ナリナリドットコム取材班もその反応を取材してきた。

会場となったのは、日本の食材やレストラン、本などのお店が数多く存在する日本人街、オペラ地区。そこにこの企画を立ちあげた「博多一風堂」を中心に、東京都江戸川区の「ちばき屋」、千代田区の「ソラノイロ」、福島県白河市の「とら食堂」、米国の「イケメンハリウッド」と「ラーメンラボ」といった名店が乗り込み、日替わりで腕によりを掛けたラーメン、また他にも寿司や焼き鳥、カレーといった代表的な日本食を振る舞った。

SNSなどの反応や、給仕担当者の実感でも、全日で最も客からの支持を受けたのは、博多ラーメン「博多一風堂」の白丸元味。「一風堂」の原点とも言えるラーメンで、訪れた客を満足させた。

支那そばで知られる「ちばき屋」の味もまた、フランス人の熱狂的な称賛を受け、作り手の千葉憲二さんを感動させたという。千葉さんは、これまでも世界中でイベントなどを行ってきた中で、豚骨や鶏の白湯スープといったものが好まれる傾向にあると感じていたそう。しかし今回、フランスのためにアレンジしようかとも悩んだ上で、最終的にはこれまで続けてきた味づくりに徹し、結果、フランス人が一番わかってくれたと語る。

このイベント全体を通して、シェフが店内にいることで、客がその感想などを直接伝えるシーンがときどき見られた。ほとんど全員の客がスープをすべて飲み干すという満足を見せた上で、「完璧だ」という言葉や、スープの色・具などの和食に通じる彩りを美しいと千葉さんに伝えてきて、心に響いたものがあるとのこと。日本ラーメン協会の理事長でもある千葉さんのこの話を聞いた筆者も胸を打たれる思いがした。

「とら食堂」竹井さんの手打ち麺は、コンセプトである“ずずっと”すするために最もふさわしい、スープのよく絡む縮れ麺。毎日手打ちで打っている様子を実演し、「指先の五感で作る」と語られた職人の仕事が、フランス人に大きな感銘を与えたそうだ。麺の香りやスープ、ほうれん草といった香りのシンプルな美味しさが人気だったという。

イベントは日が経つに連れて行列が長く、完売までの時間は短くなっていった。そして最終日には、ラーメンシェフオールスターラーメンの「鶏豚そば(とりとんそば)」が販売されたが、11時開店であるにもかかわらず、開店前の10時54分には売り切れてしまった。この“伝説”となった一杯は、鳥と豚のWパイタンスープに、塩チャーシュー(ソラノイロ)、炙りチャーシュー(とら食堂)、半熟玉子(ちばき屋)、ほうれん草(とら食堂)、キャベツ(ソラノイロ)、青ねぎ(全店舗)、とりつくね(八兵衛)をトッピングしたラーメンで、アクセントにバルサミコソース(IKEMEN HOLLYWOOD)を添えている。竹井さんの麺が使用され、トリを飾る大きな役目も果たした。

こうしたラーメンを、フランス人の客はどう食べたのだろうか。1時間、2時間待ちの行列の出た日もある盛況の中で、フランス人の客も当然のように行列に並ぶ。同じように並んでその様子を観察していたところ、皆、かなり前もって知識を入れており、並々ならぬ意気込みを感じた。

それは店内に入っても同様で、ほとんどの客が箸をうまく使って食事。給仕担当者に聞いたところ、箸の代わりにフォークを提供したのは全日程で2、3人くらいだったという。食べ方はすする人もいないではなかったが、基本的には蕎麦のように麺を箸でたぐって口元に入れる派、レンゲに麺を取り、そのレンゲを口元に持っていって最短距離で口に入れるというのが主流のようだ。

個人的には日本風の食べ方ではないかもしれないが、すでに箸の使い方は多くの人々がマスターされているように感じた。

「博多一風堂」などを手がける株式会社力の源カンパニーの経営戦略本部の山根さんは、「ラーメンだけでなく、もっと広く、日本の食文化、大衆的な訴求力のある食事を広めていきたい。その食文化の一環として、“すする”という行為、『ZUZUTTO』もアピールしている」と語り、このイベントに込められた志の高さを熱く語ってくれた。

その志の現れとして、パリ日本文化会館では子どもを対象にしたラーメンや餃子の皮を手作りするという食育企画、さらに同社の美人広報・山口さんの発案で、すでにパリで活躍している日本食レストランと連携したスタンプラリーも行われ、Tシャツやレンゲ、ステッカーといったグッズが抽選で当たる、パリっ子の心をくすぐるイベントも用意されていた。

また、山根さんは、こうした大成功といえるイベントも一過性で終えるものではないと語る。地域に根づくことを長期間、そして巨視的な考えを持って取り組まれているということは全てのラーメンを売り切ったあとに伝えられた「また次回」のコメントからもうかがえる。多くの店主が「いずれはパリで店を」と語っており、パリでこれまで以上に美味しいラーメンを食べることができる日は遠くないはずだ。



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