メガマウスザメの生態解明前進、胸鰭に見られる多数の特殊な構造発見。

2014/01/22 11:39 Written by Narinari.com編集部

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沖縄美ら島財団と北海道大学、東海大学の研究グループは1月22日、メガマウスザメの詳細な解剖学的調査を行い、胸鰭の骨格や皮膚に他のサメにはない特殊な構造が多数見られることを発見したと発表した。

メガマウスザメは1976年に発見された全長6メートルに達する大型のサメで、その大きさと奇妙な姿から、シーラカンスと並ぶ20世紀最大の魚類学的発見と言われている。しかし、世界でもほとんど目撃例・捕獲例がないというその希少性ゆえ、生態はいまだ謎に包まれたままだ。

メガマウスザメはジンベエザメ、ウバザメと並ぶ、数少ないプランクトン食のサメ。餌の摂取方法は、積極的に餌を吸引してろ過するジンベエザメとは異なり、遊泳しながら餌を口に流し込んでろ過するのではないかと推測されているが、実際の遊泳生態や摂餌生態は確認されていない。

今回の研究は、メガマウスザメの胸鰭の構造を詳細に観察し、遊泳生態を推定した初めての研究。魚の胸鰭は舵としての役割があり、その構造はその魚の泳ぎ方と密接な関係があることが知られている。本研究では、胸鰭の構造を他の外洋性のサメと比べることで、メガマウスザメの遊泳生態の解明を目指したものだ。

研究は、2007年7月に茨城県沖で混獲された全長3.7メートルのオス、2010年6月に静岡県河津町で捕獲された全長5.4メートルのメス個体を解剖して行われた。その結果は次の通り。


◎メガマウスザメの胸鰭にみられる特殊な構造

メガマウスザメの胸鰭の骨格や皮膚には他のサメにはない特殊な構造が多数見られることを発見した。これらの構造はすべて、メガマウスザメの胸鰭が高い可動性を持つことを示唆している。
1)胸鰭を支える骨格に非常に多くの関節があり、胸鰭全体がしなやかに曲がる。
2)胸鰭と胴体をつなぐ関節が蝶番になっており、頭尾方向によく動く。
3)胸鰭の皮膚に弾性繊維が多く含まれており、皮膚の伸縮性が高い。


◎可動性の高い胸鰭は「バランサー」?

メガマウスザメは非常に遅く泳ぐサメであると考えられている。一般的に、水中を進む物体は、速度が遅くなるほど姿勢を保つことが困難になる。研究グループは、メガマウスザメのよく動く胸鰭は、ゆっくり泳ぐときに体を安定化させる「バランサー」としての役割を果たしている可能性が高いと結論付けた。プランクトンを主食とするメガマウスザメは、他の外洋性のサメのように獲物を高速で追い回す必要がない。彼らのよく動く胸鰭は、ゆっくり泳いでプランクトンを濾しとって食べる彼らの生態を反映していると考えられる。


今後の展望について、研究グループは「本研究の成果は、メガマウスザメの生態解明に貢献するだけでなく、サメの中で3種しかいないプランクトン食のサメがどのように進化してきたかを解明するうえでも重要です。沖縄美ら島財団は、謎に包まれている大型海洋生物の生態解明に向け、飼育と研究を両輪で進めてまいります」としている。

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