30年以上ニュース番組を録画、80〜100万時間分の貴重な記録を活用へ。

2013/12/13 11:04 Written by Narinari.com編集部

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2012年12月に亡くなった米国のある女性は、生前、30年以上にわたりひとつの作業に没頭していた。それは、テレビで放送されるニュース番組をすべて録画して残すこと。結果、彼女が亡くなった時点で、延べ80万とも100万時間分とも言われる膨大なニュース映像が残された。そしてこのたび、彼女の息子によって電子図書館を運営する団体へ寄贈されることとなり、貴重かつ膨大な映像資料は広く市民に活用される運びとなったそうだ。

米放送局NBC系列WJARや米紙フィラデルフィア・インクワイラーなどによると、ニュース番組を録画していたのは、昨年12月にペンシルバニア州フィラデルフィアで83年の生涯を閉じた女性、マリオン・ストークスさん。1960年代まで図書館で働いた後、市民運動へ積極的に参加するなど社会情勢に敏感だった彼女は、1979年にイランで起きた米国大使館人質事件をきっかけに、今回話題になっている作業に没頭するようになったという。

メディアの違いや時間の経過によって、話題になったニュースの“報じられ方”が変わっていくと感じた彼女は、息子曰く「記録することに興味を抱いた」。1980年にはニュース専門局CNNが開局し、ますます報道に対する関心を高めた彼女は、毎日流れてくるすべてのニュース番組の録画を始めた。このときすでに、自分が録画した映像を「(何かに)役立てる人がいると分かっていた」彼女は、「アーカイブ化への展望」を見据え、ビデオデッキは8台稼働。地元放送局だけでなく、全米ネットワークの大手放送局のニュース番組も録画していた。

1人で録画作業へ没頭していた様子は「激務だった」としながらも、「彼女は本当に妥協を許さない人だった」と母親の姿勢に尊敬している様子のメテリッツさん。毎日次々と入れ替えられていったテープ代は、推定で総額「50万ドル以上(約5,000万円)」使ったと見られ、時には家族が物足りない夕食を味わう機会も少なくなかったそうだが、信念を貫く母親に対し、息子も異を唱えることもなく、尊重して最後まで見守っていたようだ。

そして2012年12月、ストークスさんは83歳で死去。その直後から、息子は母が残した大事な“遺産”を活用させたいと、フィラデルフィアやボストンなど3か所に保管されていたビデオテープ約14万本や新聞5万紙分など、膨大な歴史の記録のチェックを始めた。延べ80万から100万時間分とされるビデオテープの中身は、家族や仲間の協力も得て約1年をかけて整理。そして、さまざまな記録データを収集し、無償で研究者たちへ情報提供を行っている米国の電子図書館「インターネット・アーカイブ」に接触し、母親の映像記録を活用してもらうことで合意したという。

かつての放送局は、番組素材となるテープは一定期間を過ぎると再利用していたことから、映像資料としては残っていないケースが多く、ストークスさんが残した30年以上ものニュース映像はとても貴重な記録。提供を受けたインターネット・アーカイブ側も、団体が保管していたニュース映像は2000年代後半からしかなかったため、今回の提供により過去のデータがグッと拡張されることを喜んでいるという。

ただ、これから彼女の記録を広く利用してもらうために、提供された映像すべてをデジタル化する必要があり、インターネット・アーカイブでは「数年かかるだろう」とされる公開に向けて、これから多額に費やされる資金の調達も含め、全力を挙げて作業に取り組むそうだ。

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