フランスに“本物の和食”進出、「銀座奥田」パリ店に行ってみた。

2013/10/28 18:29 Written by Narinari.com編集部

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先日、ユネスコ文化無形遺産に登録される見通しとなった「和食」。今や世界中で愛されている寿司を始めとして、多くの日本食がいろいろな国で食べられるようになってはいるが、果たして本物の「和食」をどれだけの外国の人が口にしたことがあるだろうか。今年9月26日、「銀座小十」でミシュラン3つ星に輝く奥田透さんが、日本料理と日本文化を世界にアピールするために、パリで「銀座奥田」を開店したと聞き、フランスで食べる和食を経験しようと出かけてみることにした。

「銀座奥田」はシャンゼリゼ通りやモンテーニュ通りといった、パリで最もキラキラした一等地にある。予定時刻よりも早く着いてしまったので待合でお茶を頂いている間、たくさんの大工さんや左官屋さんによって丹精込めて作られた内装に目が奪われた。カウンターの白木は日本のお店と変わらない美しさであり、ほりごたつのお部屋の新しい畳の香りもすばらしい。

料理は、青白磁の背の高い器に、伊勢エビと彩り野菜、それにアワビがこれまた高く盛られて目を引くお皿で始まる。炭火で焼かれた野菜、上品に炊かれた茄子、包丁の仕事がしてあるアワビというように、この一皿だけでもたくさんの技法が使われていて、和食の奥深さを感じる一皿だ。

イチョウガニときのこあんの茶碗蒸し、鯛とマツタケのにゅうめんと温かなお料理が続く。フランスに来て初めてマツタケの香りに出会い、秋が来たという気持ちに。

続いてお造り。お魚については相当のご苦労があるようで、例えばマグロなどは今はどうも良い季節を過ぎてしまったとのこと。日本だとむしろこれからという季節だが、なかなかお店として提供できるレベルのものはないそうだ。イカとカレイとアジのお刺身で、イカやカレイは最初に醤油やワサビをつけて食べるのではなく、キャビアで楽しむように提案してもらった。日本料理の花形として勝負したい刺身でキャビアを使うことには抵抗があったと聞いたが、この組み合わせは外国の人がよくやるように醤油をつけすぎてしまうよりは、むしろ素材の味をうまく引き立てるのではないかと感じた。

そして焼き物が続く。紅葉のつまものが目に美しい。パリにも紅葉はあるが、ところどころ白いまだらがあったりもするので、画としては映えない。炭火でしっかりと焼かれた鱸(すずき)はとても肉厚でシンプルながら味わい深い。


そしてこの日一番驚いたのはフィレ肉の味噌幽庵焼き。フランスの牛肉とはとても思えないほど柔らかで味の濃いお肉が絶妙に火を入れられている。味噌のほのかな甘さもすばらしく、自分の中でお肉料理のひとつの完成形を見たような気がした。

ロワール川で獲れたしっかりとした身の鰻のご飯もの、抹茶のソルベと果物のゼリー寄せと進んでメニューは終わる。これ以上ない満足の一時だった。

食事をしながらお店の方々のお話を聞かせてもらったが、すでに日本で外国のお客様に対して満足させてきた実績・ノウハウを持ちながらも、フランスでの出店に際して自分たちをさらに進化させようと、お店の人たち全員が同じ目標を持っているという強い意志を感じた。

フランスの情報誌フィガロスコープは、10月23日に「Okuda」を取りあげ、「フジヤマのようなお値段」と言いながらも、そのお料理、内装、サービスを絶賛し、「これはもはや食事でありながら、食事ではない。旅行である!」と最大級の賛辞を贈っている。欧州において、日本への扉となることに間違いはないだろう。

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