宮崎駿が長編引退を正式発表「何度も言ってきたけど今回は本気です」。

2013/09/06 14:08 Written by Narinari.com編集部

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先日、スタジオジブリの星野康二社長より、現在公開中の最新作「風立ちぬ」をもって長編映画の製作から引退することが明かされたアニメーション監督の宮崎駿監督(72歳)が9月6日、都内で記者会見を開き、引退の理由などを語った。この会見はニコニコ生放送でも生中継され、平日の昼間にも関わらず10万人を超えるネットユーザーが見守った。 なお、宮崎監督は「風の谷のナウシカ」の続編は「ありません」、今後、スタジオジブリの若手監督作品への関与は「ありません」と答えている。

この日の会見は星野社長のMCにより進められ、宮崎監督、鈴木敏夫プロデューサーが登壇。宮崎監督はまず、「何度も辞めるとこれまで言って騒ぎを起こしてきた人間なので『どうせまただろう』と思われてるんですけど、今回は本気です」と挨拶。鈴木プロデューサーは「始まったものは必ず終わりが来るものだと思います。僕の立場で言いますと、落ちぶれて引退するのは格好悪いと思っていましたので、ちょうどいま『風立ちぬ』がいろいろな方に支持されているうちにこういうことを決めた、良かったんじゃないかな」と挨拶した。

そして注目の引退の理由について宮崎監督は「『風立ちぬ』はポニョから5年かかってるんです。その間、いろいろなことをやっていますが、5年かかるんです。いま次の作品を考え始めますと、5年じゃすまないでしょう、この年齢ですから。次は6年かかるか、7年かかるか。私が80歳になってしまう。僕の長編アニメの時代ははっきり終わったんだと」語った。

引退を正式に決めたタイミングは「よく覚えてないんですけど、『鈴木さん、もうダメだ』とは何度も言ってきました。ジブリを立ち上げたときにこんなに長く続ける気がなかったのは確かです。だから何度も辞めどきじゃないか、といった話を鈴木さんとしてきた。今度はリアリティを感じたんじゃないかな」。

鈴木プロデューサーは「『風立ちぬ』の初号が6月19日だったんですが、その直後だったのでは。これが最後だとこれまでも言ってきたけど、今回はちょっと本気だなと僕も感じざるを得ませんでした。ナウシカから数えると今年がちょうど30年目。その間いろいろありました。やめようかとか、やめまいかとかいろいろな話があったんですが、今回は僕も、ずっとあった緊張の糸が少し揺れたんですね。別の言い方すると、僕自身が少しホッとするみたいなところがあったんです。若いときだったらそれをとどめさせようとかいろいろな気持ちが働いたと思うんですけど、本当にご苦労さまでしたという気分が沸いたというところがありました」。

気になる今後について宮崎監督は「(ジブリ美術館で上映している短編映画ではなく)前からやりたかったことがあるのでとりあえずそちらを。それはアニメーションではありません」とのこと。また、今後のジブリについて鈴木プロデューサーは「僕も年齢が65歳でございまして、このジジイがどこまで関わるかという問題もあると思います。ジブリの問題は、いまジブリにいる人たちの問題でもある」とし、注目される“後継者”など踏み込んだ発言はせず、“重し”がなくなったことで現場から新たな人材が出てくることに期待を寄せた。

ちなみに、宮崎監督の“やりたいこと”については「やりたいことはあるんですけど、やれなかったらみっともないので言いません(笑)」と明かさず、「僕は文化人になりたくないんです。町工場のオヤジでして。発信していこうとかは考えない」と語った。

長編映画の監督業を続ける中で、最も辛かったと思うことは、「スケジュール。どの作品も辛かったです。終わりまで分かってる作品は作ったことがないんです。『こうやって終わる』という見通しのないまま作ったものばかりで、辛かったです。絵コンテって作業があるんですけど、まるで月刊誌のような感じで絵コンテを出す。スタッフはこの映画がどこにたどりつくかわからないまま作業してるんです。それが自分にとって一番しんどかったことです」と振り返る宮崎監督。

逆に良かったと思うことは「監督になって良かったと思うことはありません」とキッパリと語るも、「アニメーターになって良かったと思うことは何度もあります。うまく風がかけた、水の処理ができた、といったことで幸せになれるんです。2〜3時間とかでも。アニメーターという職業は自分に合った良い職業だったと思っています」と、アニメーターへのこだわりを明かした。

「最も思い入れのある作品は?」との質問に宮崎監督は「自分の中でトゲのように残っているのは『ハウルの動く城』です。ゲームの世界なんです。それをゲームでなくドラマにしようとした結果、格闘しました。僕は児童文学の多くの作品に影響を受けてこの世界に入った人間ですので、基本的に子供たちに『この世は生きるに値するんだ』というのが仕事の根幹になければと思っています。それは今も変わっていません」と語った。

昨今、海外での評価が高まる日本のアニメ事情については「誠に申し訳ないのですが、私が仕事をやるということは、一切映画もテレビも見ない。ラジオは聞きます。新聞はパラパラ。あとは驚くほど見ていないんです。だからジャパニメーションがどこにあるのかわからないんです。それに対する発言権は僕にはないと思います」とコメント。

また、「あえて引退宣言をした理由は?」と問われた宮崎監督は「引退宣言をしようと思ったんじゃないんです。(引退は)スタッフに言いました。その結果、プロデューサーから『取材の申込みがあるけどどうするか、いちいち受けたら大変ですよ』という話がありまして、人数が多くてアトリエに入れない、会議室もどうも難しいという話になり、ここになっちゃったんです。こんなイベントをやる気はさらさらなかったんです。ご理解ください」と回答した。

宮崎監督は1979年に「ルパン三世・カリオストロの城」で監督デビューを飾ると、その後は「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」「魔女の宅急便」「紅の豚」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」「ハウルの動く城」「崖の上のポニョ」など数々の名作を世に送り出した。監督作の興行収入は「千と千尋の神隠し」の304億円を筆頭に、「ハウルの動く城」の196億円、「もののけ姫」の193億円、「崖の上のポニョ」の155億円と、100億円を超えたメガヒット作品が4作ある。

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