一時期、特に米国の若者の間で流行となった“シナモンチャレンジ”をご存じだろうか。スプーンに盛ったシナモンの粉末を一気に飲み、むせながら苦しむ様子を撮影した動画が面白いとして広がった危険なブームだ。YouTubeなど動画サイトにはそうした動画が何万件もアップロードされているが、このほど米国の医師が警告を発する論文を発表し、改めて注目を集めているようだ。
米紙USAトゥデーやデンバー・ポストなどによると、シナモンチャレンジに警告を発しているのは、フロリダ州にあるマイアミ大学レオナルド・ミラー医学校のスティーブン・リプシュルツ博士らのグループ。彼らは若者の間で流行となったシナモンチャレンジに関する調査を行い、その影響で病院に運ばれる患者数が「近年、劇的に増加」したとする結果内容などを、先日、米小児医学専門誌「PEDIATRICS」に発表した。
昨年2月、ミシガン州イプシランシティに住む女子高生デジャー・リードさんは、「楽しそうだと思って」(米放送局ABC系列WXYZ-TVより)数回、シナモンチャレンジを決行。ところがチャレンジ終了後、粉末が「喉に引っ掛かった」感じが収まらず、呼吸が思うように出来なくなった彼女は、次第に意識が遠のき顔色にも変化が現れた。異変に気が付いた父親が急いで病院へと運んだところ、シナモンの粉末が入った彼女の右側の肺はしぼんだ状態となっており、感染症も引き起こしていたという。結局、4日間の入院生活を送った彼女は、「二度とチャレンジをしない」と固く心に誓ったそうだ。
動画サイトに投稿された多くの映像に若者が注目し、特に米国で広がったシナモンチャレンジ。しかし、彼女のように挑戦した後に異変を起こす人は増えているそうで、シナモンチャレンジが原因とされる病院への搬送件数は、2011年には全米で51件だったのが、2012年には222件と大幅増。今年も3月までに20件が報告されているという。
桂皮とも呼ばれ、デザートなどにも用いられるシナモンは、シナモンの木の樹皮を乾燥させて作られたもの。その多くの成分となっているセルロースは肺に入ると分解されないため、やがて損傷を引き起こし、長期に渡って機能低下などの影響を招く可能性があるとリプシュルツ博士らは指摘する。
また、気管にもダメージを与えて炎症を引き起こしやすく、結果としてせきや鼻血、嘔吐などの症状から、さらに深刻な健康状態へ陥るケースもあると警告。シナモンチャレンジをしなければ問題が起きないだけに、博士らは「不必要で、回避できる」と面白がる若者らに挑戦しないよう訴える。
リプシュルツ博士らが行った動物実験からは、シナモンによる肺の炎症が数か月後でさえ残っていた事実が判明。人間であれば、肺気腫を起こした高齢者のように、酸素を充分に取りこめない肺になる可能性もあるという。人間、何を楽しむにしても健康があってこそ。一時の面白さ目当てでやった行動が人生に大きな影響を与えないよう、シナモンチャレンジだけに限らず、無茶な行動をする前に後先を考える余裕は持っておきたいものだ。