Tシャツ姿で-40度の地へ転落、走る列車の扉が開き放り出される。

2013/01/27 11:15 Written by Narinari.com編集部

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氷点下40度ともなれば、バナナで軽く釘を打てるほど凍ってしまう極寒の世界。防寒着がなければ、多くの人は命の危険に晒されるはずだ。先日ロシアのある男性は、思いがけず薄着でそんな世界に身を置くハメになったという。列車に乗っていて、暖かな車内でズボンにTシャツ姿だった彼は、なぜか鍵が開いていたドアに誤って手を掛けてしまい、極寒の大地へと転落。走行中の列車から落ちるだけでも充分危険だが、彼は切迫感と持ち前の体力で、命の危機から脱出したそうだ。

露紙シベリアン・タイムスによると、危険な状況に陥ったのはロシア中東部の街ブラーツクでトラック運転手をしているという、42歳のヴァレリー・マルコフさん。彼は先日、石炭で有名なシベリアの街ネリュングリへ旅行に行くため、東へ向かう長距離列車に乗っていた。真冬のシベリア内陸部を走る列車内は暖房が効いて、快適な環境。そのため彼は、Tシャツにズボン、スリッパ姿という軽装で車内の時間を過ごしていた。

すると、途中でタバコが切れたことに気が付いたマルコフさん。車内に置いていないか探しに行こうと個室を出た彼だったが、この直後に思いもよらない命の危機が訪れた。普段はロックされてるはずのドアに間違って手を掛けた彼は、開けた瞬間に猛烈な寒さの車外へ放り出されたという。幸い転落した影響はなく、体は無傷だったそうだが、自分を乗せていた列車はどんどん自分の視界から遠ざかる一方。置き去りにされた彼は、急いで列車を追い掛けて走り始めた。

当時、辺りの気温は氷点下40度。じっとしていたら「長く生き続けられるはずがなかった」環境に、突然Tシャツにスリッパという軽装で身を置くハメになったマルコフさんは、必死で電車を追って走り続けたそう。「近くの駅か何かにたどり着きたいとの思いだけで、ほかは何も考えていなかった」という彼が、生存の道を求めて必死に走ること、およそ7キロ。何とか駅を見つけた彼は、転げるように助けを求めたという。

シベリアにおいて、氷点下40度の中をTシャツ姿で7キロ走り続けたのも“奇跡”なら、着いた駅が有人の駅だったのもまた“奇跡”だった。そこはモスクワから東に7,200キロ、第二次世界大戦中に活躍したソ連のドイツ人スパイの名が付けられたリヒャルト・ゾルゲ駅。突然軽装で入って来たマルコフさんに、駅長もびっくりしていたという。しかし事情を知ると、暖かいお茶を出して彼をもてなし、駅長は一晩駅に泊めさせると、翌日朝に来た長距離列車を停止させて彼を乗せたそうだ。

気が付けば転落の際のけがも、寒さによる凍傷も一切なし。その後も風邪ひとつ引かず、日頃から頑丈な体を作り上げていたことが、無事にこの災難を乗り切った大きな要因になったようだ。とはいえ、Tシャツでの氷点下40度の世界はさすがに堪えたそうで、自分でも「何で凍らずに済んだのか不思議」と話している。

ただ、今回は彼の“火事場の馬鹿力”で助かったから良かったものの、もともとは閉まるべきドアが閉まっていれば起きなかった話。鉄道会社では、ドアのロックが外れていた原因について、現在調査を進めているという。

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