文化財の歴史的洋館で結婚式、神戸の旧ジェームス邸が婚礼施設に。

2012/12/10 06:34 Written by Narinari.com編集部

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婚礼施設運営のノバレーゼは12月8日、神戸を代表する歴史的洋館で、三洋電機創業者の自邸であった旧ジェームス邸(神戸市垂水区)を婚礼施設兼フレンチレストランとして開業した。レストラン営業を始めるグランドオープンは10日から。

旧ジェームス邸は、英国人貿易商であったアーネスト・ウィリアム・ジェームス氏が1934年に建設。戦後に三洋電機の創業者である故・井植歳男氏が購入し自邸とした後、同社の迎賓館として多くの賓客をもてなしてきた。

クリーム色のスペイン風洋館は特徴のある寄せ棟造りの地上2階(塔屋あり/3、4階)、地下1階建てで、緑の木々が立ち並び、瀬戸内海を見下ろす小高い丘の上、約1.3ヘクタールの広大な敷地に建っている。

木々と広々とした芝生の緑に囲まれる洋館の中に入ると、英国風の意匠が凝らされ、大理石の暖炉や高い板張りの壁など重厚な雰囲気に。昭和初期の豊かさを今に伝えるスパニッシュ・スタイルの本格的な洋館で、今年2月には神戸市指定有形文化財となるなど、神戸に残る歴史的建造物の中で最も重要な建物の一つだ。

同社はそんな外観や内観の趣のある歴史的建築美を生かしながら、地上階はレストランや婚礼の待合室として利用し、地下のレンガ積みのバーもそのまま活用。また、建物の東側には着席で最大120人を収容する披露宴会場を、西側には80席のチャペルを新設した。高砂と祭壇越しには瀬戸内海の海が広がる圧巻の景観だ。

施設は土日祝日を昼夜各1組限定の婚礼施設として、平日をフレンチレストランとして運営していく。

なお、敷地は所有する三洋電機から同社が借り受け、施設の設計および施工は旧ジェームス邸を1934年に設計施工した竹中工務店が行った。


☆旧ジェームス邸とは

旧ジェームス邸は昭和初期の1934年(昭和9年)、神戸で生まれ育った英国人貿易商で、神戸・江戸町の「カメロン商会」総支配人だったアーネスト・ウィリアム・ジェームス氏が建設した。

同氏は旧ジェームス邸の完成前の1928年(昭和3年)、日本にとって西欧との貿易が重要との考えから、外国人向けの住宅街を建設しようと、荒れ地だった神戸市垂水区塩屋町の高台の土地、約23万平米を購入。道路、水道などの設備に私財を投じ、58棟の賃貸住宅を建設し、公園や教会も造り、北野に次ぐ“西の異人館街”を誕生させた。

小高い山は“ジェームス山”として長年親しまれており、その中心となるのが旧ジェームス邸だ。建物のクリーム色の土壁や丸みを帯びた玄関のポーチ、橙色で円すい形のスペイン瓦葺は、完成した1934年当時、阪神間の邸宅に多かったスパニッシュ様式を踏襲している。手入れの行き届いた緑の庭と瀬戸内海の海に瀟洒な洋館が映える、異国情緒あふれる邸宅だ。

1952年にジェームス氏が亡くなってからは、三洋電機創業者の故・井植歳男氏が邸宅と周辺の不動産などを高台ごと購入。円形に連なる八つの窓から東には須磨の海岸、西には淡路島東岸が眺望できることから「望淡閣」と名付けられ、迎賓館として使われていた。

2005年には竹中工務店の設計施工で内外装の修復工事が行われ、竣工当時の美しい姿に復元。しかし、昨今はあまり利用されていなかった。

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