鼻の異物除去に“ママのキス”、英研究グループが「有効」と結論。

2012/10/21 08:34 Written by Narinari.com編集部

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豆やビーズなどの異物が鼻の穴に入り込み、自力では取り出せなくなる鼻腔(くう)内異物は子供に多く見られる。日本では一般的に「無理に取ろうとせず、耳鼻咽喉科を受診する」ことが勧められているが、海外では別の方法が試されることもあるようだ。英バックステッド医療センターのStephanie Cook氏らは「ママのキス」法(“mother's kiss”technique)と呼ばれる除去方法に関する評価を実施。その有効性と安全性を、10月15日付のカナダ医学誌「CMAJ」(電子版)に報告した。「ママのキス」と名付けられているものの、実際は名前のようにやさしい方法ではなさそうだ。

◎片鼻を閉じて息を吹き込む

鼻腔内異物は2〜5歳の子供によく見られるトラブルだが、取り出すのは決して簡単ではないという。医学書などでは、ある年齢以上になると異物を誤って鼻に入れたことを認めようとしない、あるいは親に隠すため、感染症などの異常が出るまで気付かれにくいこともあると解説されている。

「ママのキス」法は、1965年に米ニュージャージー州の医師、Vladimir Ctibor氏が開発した方法。オリジナルの手法は「母親または信頼できる大人が、異物がない方の鼻の穴を指で閉じ、子供の口を開けさせ人工呼吸の要領で息を吹き込む」というもの。これにより、うまくいけば異物の摘出が可能になるという。

Cook氏らは、この方法を行う際に医師などから十分な説明が必要となるとしつつ、保護者が「これから大きなキスをするからね」と説明することで、子供の恐怖心が和らぐこと、麻酔などの器具を必要としないため、一度失敗しても繰り返し処置を行うことができる、などの長所もあるとしている。

同氏らは今回、「ママのキス」法で異物の除去に成功した症例が含まれており、かつ有害事象(副作用)の評価が行われていることなどを条件に論文を検索。8つの論文を対象に、系統的レビュー(※過去に行われた複数の研究を選別、吟味、要約し、それらが最も良い科学的根拠となるかどうかを評価する分析方法)を行った。

◎成功率6割、副作用もなし

異物除去の成功率は全体で59.9%(152件中91件)で、有害事象は報告されていなかった。Cook氏らは、「ママのキス」法で理論的に懸念される有害事象として、鼓膜の破裂や気胸、鼻の穴から出てきた異物が気道など体内の別の場所に移動してしまうことを挙げているが、今回の報告ではそうした事象に関する記述はなかったという。

ただし、6つの論文では救急外来の医師や看護師から事前にやり方の説明を受けた上で実施されていたほか、残る2つの論文(患者数各1例)ではいずれも実施者である患児の父または母が医師だった。

以上の結果からCook氏らは、鼻腔内異物に対する「ママのキス」法は安全かつ有効な治療だと結論。一部の症例では、麻酔を使う事態になることを防げたとも述べている。その上で、さらなる研究を行ってより詳しい検討が必要との見方を示した。

※この記事(//kenko100.jp/news/2012/10/19/01)は、医学新聞社メディカルトリビューンの健康情報サイト「あなたの健康百科」編集部(//kenko100.jp)が執筆したものです。同編集部の許諾を得て掲載しています。

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