高学歴は職場の負傷リスクに? 教育と仕事のミスマッチが背景。

2012/09/27 11:03 Written by

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カナダ・マクマスター大学保健・加齢・社会学のStephanie Premji准教授らは、カナダ人約6万3,500人の世帯調査のデータを検討し、職務で必要とされるレベル以上の学歴を持つ男性では職場で負傷するリスクが高かったと、英医学誌「Injury Prevention」(電子版)に発表した。

◎他国からの移住後の期間も要因

2008年のデータによると、カナダでは雇用されている人(25〜54歳)の4人に1人が、職務で必要とされるレベル以上の教育を受けているという。

Premji准教授らは、職場で必要とされるよりも高い学歴と職場での負傷リスクとの関連性を検討するため、2003年および2005年にカナダで実施された世帯調査から過去12カ月間に就労実績のある25歳以上の成人約6万3,500人のデータを検討。また、同国に移住してきた人に関しては、移住後の期間についても調べた。勤務中の負傷については「過去12カ月間に勤務時に発生した日常動作が制限されるほどの傷害で、48時間以内に何らかの治療を受けた場合」と定義した。

その結果、職務で要求されるより高い学歴は、男女問わず勤務中の負傷リスクと関連していた。一方、職務で必要なレベルよりも低い学歴の男性では、勤務中の負傷リスクが低い傾向にあったという。

また、移住してからの期間との関連も検討したところ、移住後5年以下かつ職務で必要とされる以上の学歴を持つ男性では、必要以上の学歴がなく同国に5年を超えて居住している男性と比べ、勤務中の負傷リスクが5倍以上高いことが分かった。

職務の肉体労働レベルを考慮した上でも、移住後の期間が短く職務で必要とされるレベル以上の学歴を持つ男性では、負傷リスクが3倍以上高かった。一方、女性ではこのような関連性は認められなかったという。

Premji准教授らは、移住後間もない労働者では、言葉の壁やその国に不慣れなことが健康や安全への理解や注意を妨げる場合があると指摘。また「必要以上に高い学歴は、同僚との協調性の欠如や上司との衝突につながる場合もあり、それによって仕事量の配分に偏りが生じたり、手助けしてもらえるような人間関係を築くチャンスが減ることにもなる」とし、「今回の研究結果は、国民の教育水準の向上と、各分野における専門技術職の数が釣り合っていない高所得国に対して、重要な示唆を与えるもの」と述べている。


※この記事(//kenko100.jp/news/2012/09/26/01)は、医学新聞社メディカルトリビューンの健康情報サイト「あなたの健康百科」編集部(//kenko100.jp)が執筆したものです。同編集部の許諾を得て掲載しています。

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