83歳の客室乗務員が現役引退、63年のキャリアも「時が来た」と決意。

2012/09/12 16:39 Written by Narinari.com編集部

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米ユナイテッド航空に長年勤め、「米国で最も長い期間働いた客室乗務員」として知られた存在だった83歳の男性がいる。しかし、体力の限界からついに引退を決意した彼は8月26日に最後の仕事を終え、63年のキャリアに幕を閉じたという。

米紙ボルダー・デイリーカメラや英紙デイリー・メールなどによると、この男性はコロラド州ボルダーに住んでいるロン・アカナさん。第二次世界大戦が終わって間もなくの1949年、ハワイ出身の彼は地元紙に掲載された求人広告を見つけ、「どんな仕事かよく分からない」まま応募した。それはユナイテッド航空がハワイ在住者を対象に行った客室乗務員の募集広告。当時の社長がハワイ出身だったことから、同社はその年に初めてハワイで採用を行ったそうで、彼は何も知らずに応募しながらも結果として合格した8人のうちの1人に選ばれ、晴れて仕事を掴んだ。

待遇面はかなり良く、入社当初から月給は基本給185ドル(当時のレートで約6万6,000円)に加え、経費として1日につき「6ドルか7ドル」が支給されたそう。当時のハワイでは「約20人分の月給」に相当する、素晴らしく高給の仕事に就いたわけだが、彼にとってはお金の面よりも「島から出られる」ことが一番の魅力だった。1951年、同社はホノルルからロサンゼルスとサンフランシスコを結ぶ路線を就航。数々の有名人も搭乗してきた太平洋路線の仕事で初めて島を出た彼は、以後多くのフライトを経験して着実にキャリアを重ねていく。

1962年には、同僚の紹介でスチュワーデスだったエリザベスさんと知り合い、半年後に結婚。会社の規則により、妻はスチュワーデスを辞めて家庭に入ったものの、「会社が彼を特別に扱ってくれた」おかげで夫の給料だけでも充分な生活ができたといい、彼もそんな会社が好きだったという。やがて2人は一男一女をもうけ、娘のジーンさんは両親を追いかけるようにユナイテッド航空に入社。父の後輩として、娘も空を活躍の場に忙しい毎日を送るようになった。

そして、経験を重ねるに従い「だんだん虜になり始めた」客室乗務員の仕事を、気付けば半世紀以上も働き続けたアカナさん。しかし、今年84歳の彼は、ついに仕事の楽しさ以上に辛さを感じるときが来たようで、骨や関節の痛みで満足に仕事が出来なくなったことから引退を決意するに至った。

客室乗務員として最後の乗務となったのは、8月26日にデンバーを出発したホノルル行きの便。太平洋を約1万回も渡った彼を労おうと、機内では妻と2人の子ども、孫が彼の最後の雄姿を見守り、63年の客室乗務員人生を無事終えたという。

長い現役生活を終えた今、「世界中の空で、お客さんや仲間たちに囲まれる時間が無くなってしまうね」と残念そうに話すアカナさん。働き詰めだった彼にとって、これから地上ばかりで過ごす生活に適応するのは大変かもしれないが、まずは今まで支えてくれた妻と共に、太平洋沿岸の街へ出かける予定を立てているそうで、今度は第二の人生も思い切り楽しんでもらいたいところだ。

なお、これまで長年にわたり「米国で最も長い期間働いた客室乗務員」(※最高齢は別にいる)として知られてきたアカナさんだが、このたび、「世界で最も長い期間働いた客室乗務員」としてギネス記録に認定されたという。

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