栄養ドリンクで心臓機能改善? ただし過去には連日飲用への警告も。

2012/09/03 16:15 Written by

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栄養ドリンクにはカフェインやタウリンが含まれており、心不全患者などでは心臓の機能が悪化する恐れがあるため、飲むのを制限すべきとの意見も多く聞かれる。イタリア・シエナ大学のMatteo Cameli氏らは、少人数の若い健康ボランティアを対象とした検討から心臓機能の改善作用を明らかにし、第34回欧州心臓病学会年次集会(8月25〜29日、ミュンヘン)で発表した。同氏らは、今後、心臓病患者が飲むことによる有益性とリスクの検討も視野に入れるべきとの見解を示している。


◎飲んだ1時間後に左右心室の機能が改善

栄養ドリンクに含まれるカフェインは片頭痛治療薬として用いられており、血圧の上昇や不整脈を引き起こすことが知られている。一方、タウリンはうっ血性心不全の治療に用いられる他、心臓の機能を改善するメカニズムを解明する研究も進んでいる。

「最近の栄養ドリンク市場拡大の勢いはすさまじく、徹夜の仕事やスポーツの現場での活力維持に広く用いられるようになっている」とCameli氏。一方で、カフェインやタウリンの心臓に対する有害な作用が懸念されるが、その詳細は明らかになっていない。

同氏らは、25歳(中央値)の健康な35人を対象に、体表面積当たり168ミリリットルの栄養ドリンクを飲ませ、研究開始時および飲んでから1時間経過した時点で心臓の機能を評価した。

研究開始時に比べ、栄養ドリンクを飲んだ1時間後の心拍数や収縮期(最高)血圧の上昇は認められなかったが、拡張期(最低)血圧は上昇。同氏らはさらに、心電図や超音波で心臓機能の詳しい評価を行ったところ、左心室、右心室ともに機能が向上していることが確認された。


◎過去には連日飲用を警告する研究も

以上の結果について、Cameli氏は「栄養ドリンクを飲むことで左心室、右心室ともに収縮能が増大し、心臓の機能に良い影響が認められた」と結論。メカニズムとしては、タウリンがもたらす筋小胞体からのカルシウムイオン放出による変力作用が考えられると述べている。

また今後、長期使用による心臓の機能への有益性、心臓病患者に対して懸念されてきた以上の有益性あるいはリスクがあるのかを検証することも重要とした。

しかし、過去には類似の検討で異なる結論も示されている。2007年に米国心臓病協会年次集会で発表された15人の健康な人を対象にした検討(「Circulation」2007; 116: II_831)では、栄養ドリンクを1週間飲んだ場合、心拍数や血圧が上昇したという。当時、報告を行った米ウェイン州立大学のLeah Steinke氏らは「心臓病患者や栄養ドリンクを毎日のように飲んでいる人では、今回見られた心拍数や血圧上昇によって影響が生じる可能性がある」と結論付けている。

※この記事(//kenko100.jp/news/2012/08/31/02)は、医学新聞社メディカルトリビューンの健康情報サイト「あなたの健康百科」編集部(//kenko100.jp)が執筆したものです。同編集部の許諾を得て掲載しています。

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