近視原因は日光への暴露不足、屋外で過ごす時間長いと近視の進行抑制。

2012/08/24 15:15 Written by

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オーストラリア国立大学のIan G. Morgan教授らは、日本や中国、香港、韓国、シンガポールなど東アジアと東南アジアで近視が多いのは、過度の勉強や遺伝的なものではなく、屋外で日光を浴びる時間が短いためだとする論評を、英医学誌「Lancet」(2012; 379: 1739-1748)に発表した。これらの国々では、都市部に住む高校生の8〜9割が近視という。

◎環境要因によるものが多い

これまで近視は遺伝的要因によるものと考えられてきたが、近年になって環境要因によるものが大きいことが分かってきた。例えば、シンガポールでは1996年以降、主な3つの民族(中国系、インド系、マレー系)全てで近視の有病率が急上昇していることから、全民族に共通の危険因子があることが示唆されている。

遺伝的要因か環境要因かをめぐっては、移民を対象とした研究から興味深い結果が示されている。英国とオーストラリアに住む南アジア系移民の子供を対象とした研究では、近視の割合がインドの子供より高く、シンガポールの南アジア系の子供より低いことが示されている。

一方、オーストラリアに住む中国系の学生の近視率は、東アジアや東南アジアの都市部に住む中国系の学生よりも低い。また、シドニーに住む欧州系の子供の近視率は、英国の子供よりはるかに低いことを示すデータもある。

◎日光浴の効果を検証へ

環境要因については、学校教育と近視の関連を示す多くの研究結果が報告されている。読書の際に目を本に近づけ過ぎたり、過度の勉強が近視の原因だと考えられてきた。しかし、近年の疫学調査により、屋外で過ごす時間が長いと近視の進行が抑制されることが分かってきたという。

例えば、シンガポールとシドニーの中国系の子供を対象にした研究では、シンガポールの子供の近視率の高さと関連する唯一の環境要因は、屋外で過ごす時間であることが示されている。シンガポールと中国では、近視の予防策として屋外で日光を浴びる時間を長くすることの効果を検証している。これらの研究からは、民族によって学齢期の近視(学校近視)率が異なるのは、民族による遺伝的要因よりもむしろ居住地の環境によるものであることが示唆されている。

しかし、遺伝的要因と環境要因の相互作用が学校近視にどの程度の影響を及ぼしているのかについては、まだ解明されていない。さらに、高度近視は環境要因に押される形で増加しているが、失明につながる恐れのある高度近視の一部では明らかな遺伝的要因との関連が認められている。

Morgan教授らは「たとえ効果的な予防法が開発されたとしても、今後1世紀にわたって東アジアでは成人の高度近視の発症リスクが高い状態が続くだろう。近視に対する有望な治療法が開発されつつあるが、より効果的な治療法を確立していく必要がある」と指摘している。

※この記事(//kenko100.jp/news/2012/08/24/01)は、医学新聞社メディカルトリビューンの健康情報サイト「あなたの健康百科」編集部(//kenko100.jp)が執筆したものです。同編集部の許諾を得て掲載しています。

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