米ジョージア州に本拠を置く、ファストフード・チェーンのChick-Fil-A(チックフィレイと発音)は、ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)と並ぶ、チキンサンドイッチなどの鶏肉をメインとしたメニューを提供するファストフード・レストランです。1986年に最初のフランチャイズ店がオープンしてから、ショッピング・モールなどを中心に店舗数を増やしてきました。
そのChick-Fil-Aが最近、あるインタビューでの社長の発言が原因で、大きな批判を受けています。さらにその批判に対して後日、同社が事態の収拾とイメージダウン回避に乗り出したのですが、その内容が「まったくのウソとしか思えない」として、インターネットを中心にさらに批判を浴びることとなり、投稿型情報サイトのredditなどで大炎上となりました。
◎キリスト教の宗教観を反映した経営スタイル
創業者である会長が敬虔なキリスト教徒である影響で、同社は経営スタイルにもその宗教観が色濃く反映されています。例えば聖書の教えでは日曜日は休息の日とあるため、同チェーンは全店舗で日曜日はお休みに。さらにキリスト教関連団体への多額の寄付金や、子ども向けのセットメニューと一緒にキリストの教えを説いたCD、おもちゃを配布するなど、布教活動のようなことも行っています。
問題となっているのは、そんな同社の社長を務めるダン・キャシー氏の発言。それは「私たちは家族を重視する企業です、ここで言う家族とは『聖書で教えられている通りの』(男女一組の夫婦による)家族のことを指しています」と、同性婚に反対する内容でした。
同性愛者への社会的権利を認め、同性婚合法化の運動が盛んとなっている米国で、この発言はメディアを中心に注目を集め、“反ゲイ思想”だと多くの批判を呼ぶことに。そして、その影響は直ちに同社の経営に響きました。
同社は「マペット・ショー」などの作品で知られるThe Jim Henson Companyと提携し、子どもメニューのおまけとしてキャラクター人形を提供していたのですが、The Jim Henson Companyは同性婚を支持する立場から、Chick-Fil-Aとのビジネスを今後一切打ち切ると表明したのです。このニュースはまたしても大きく報道され、さらなるChick-Fil-Aへのイメージダウンに繋がってしまいました。
◎イメージ回復に努めるもウソ連発
一連の騒動直後から、Chick-Fil-Aはイメージ回復に躍起になりますが、その内容があまりにも「ウソっぽい」として、さらなる反発を招いています。まず、The Jim Henson Companyの契約打ち切り発表後、同社は顧客への説明として店内に「このたびThe Jim Henson Company製のキャラクター人形に欠陥があることが判明しました。よって今後これらのおもちゃを配布すること自粛することになりましたのでお知らせ致します」というお知らせを掲示。これを撮影した写真がredditなどに投稿されると、瞬く間にコメント欄は炎上状態となり、さらに批判は同社のFacebookページにも飛び火、「どう考えたって、契約を打ち切られた後に考えた、見苦しいウソじゃないか」といった怒りの声が殺到しました。
それでも批判コメントが並ぶ中、少なからずChick-Fil-Aの考えを支持する声や、援護する意見もちらほらとありました。例えば、ある女性のFacebookユーザーが同社のページに残した複数のコメントは「数週間前から(The Jim Henson Company製の)おもちゃは、Chick-Fil-Aで配布停止になっていた」というもの。つまり、同社の今回の決定は契約を打ち切られる以前から行われていたことで、The Jim Henson Companyの発表とは無関係だと“証明”する内容でした。
ところが、この女性の発言内容に疑いを持ったほかのユーザーらが調べたところ、この女性のFacebookアカウントは彼女がコメントを残すほんの数時間前に作成されたものだと判明。さらに彼女のプロフィール写真は著作権フリーの画像配布サイトからダウンロードされたものだとわかりました。それらのことから、この女性は架空の存在で、Chick-Fil-Aの自作自演、さらなるウソの上塗りではないかと、これまたインターネットで大炎上を引き起こすことになったのです。
もちろん、Chick-Fil-Aが本当に自作自演していたのか、その真相はわかっていません。しかし、キャラクター人形の一件との合わせ技で、同社への風当たりは強くなるばかり。Chick-Fil-Aは今回の「2つのウソ疑惑」に対して、「まったくの噂に過ぎない」とのスタンスを貫くという趣旨のコメントを発表していますが、日に日に大きくなっている同社への反発の声が収拾するには、まだしばらく時間がかかりそうです。