喫煙率低下で肺がん死大幅減、米国で1975〜2000年に“劇的”な変化。

2012/07/19 20:24 Written by

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米フレッドハッチンソンがん研究センターのSuresh H. Moolgavkar氏らは、1950年代半ばからの喫煙率の変化により、米国では1975〜2000年に肺がんによる死亡数が大幅に減少したと、米医学誌「Journal of the National Cancer Institute」(2012; 104: 541-548)に発表した。同氏らは、肺がんは依然として大きな脅威とし、禁煙に向けたさらなる対策が必要と指摘している。

◎25年間で79万人の死亡を回避

公共の場での喫煙制限や、たばこ税の引き上げ、たばこへのアクセス制限、さらにたばこが健康に与える害に関する啓発が進んだことで、米国では1950年代半ば以降、喫煙者数を減らすことに成功した。

しかし、喫煙者数の減少が肺がんによる死亡数の減少にどれだけ寄与したのかについては、ほとんど検証されていない。そこでMoolgavkar氏らは、研究データなどを基に1975〜2000年の肺がん死を集計し、両者の関連を検討した。

1975〜2000年の肺がん死亡数は、男性で206万7,775人、女性で105万1,978人。禁煙対策により、同期間に約79万人(男性:約55万人、女性:約24万人)の肺がん死亡が避けられたと推定された。

Moolgavkar氏らは「20世紀後半の禁煙対策により、1975〜2000年の肺がん死亡者数に劇的な減少がもたらされたことが明らかとなった」と結論。また、「エビデンス(科学的根拠となる研究結果)に基づいた禁煙政策や禁煙プログラム、さまざまな禁煙サービスを継続的に導入することが、肺がん死を減らす最も効果的なアプローチに他ならない」と強調している。

◎“たばこ時代”の終焉に向けて

米国がん協会のThomas J. Glynn氏は、同誌の付随論評(2012; 104: 495-497)で、肺がん死の抑制につながった背景として米国で施行された「米医療保険制度改革法」と「家族の喫煙予防とたばこ規制法」を挙げている。

Glynn氏は「たばこ税は、連邦、州、市町村レベルでも大幅に増税されており、たばこ規制の効果は高まっている」とコメント。「喫煙習慣に対する新治療薬の開発、禁煙法やたばこ規制により、職場や公共の場、さらに家庭における受動喫煙から多くの人が守られた」と評価する一方で、たばこ産業がこうした規制法との対決姿勢を強めていることを指摘。また、多くの州政府が規制に対する支持を弱めていることに懸念を示している。

その上で「政治、研究、啓発、公衆衛生、臨床技術など、ありとあらゆる力を結集し、死や病気、障害をもたらす“たばこの時代”を終焉(しゅうえん)させなければならない」と述べている。

※この記事(//kenko100.jp/news/2012/07/19/02)は、医学新聞社メディカルトリビューンの健康情報サイト「あなたの健康百科」編集部(//kenko100.jp)が執筆したものです。同編集部の許諾を得て掲載しています。

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