自炊OKの巨大調理場で離職減、中国工場の“食の不満”解消に一役。

2012/07/17 13:09 Written by Narinari.com編集部

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“世界の工場”と呼ばれる中国には、それこそ数えきれないほど多くの工場があるが、工場経営者にとっての悩みのタネは慢性的な工員不足だ。若者人口の減少や急速な経済発展、思考の変化などその原因はさまざまだが、工場としては工員を確保しなければ物作りができず、致命的な打撃を受けることになる。そのため、各工場は賃金や休暇制度を見直すなど、あの手この手で工員確保に躍起になっているが、ある工場では、ほかとは一線を画す方法で工員確保に成功しているという。

現在、中国人工員が会社を選択する基準は“高賃金+α”。かつては給料さえ高ければ職種を問わず人が集まる時代もあったが、そんな時代はすでに過去のものとなりつつある。経済発展や若者人口の減少などで工員の要求は高くなるとともに、何かと労働争議が勃発している昨今では、「いかに工員を確保するか」との議論が日常的に行われるほどこの問題は深刻だ。

もともとどんな仕事でも転職が当たり前な中国では、日本に比べると人材の引き止めが難しい面はあるが、工員の転職理由で特に多いのが食事に関する不満。「メシが不味い、少ない」はどこの工場でも聞かれる彼らの転職理由の常套句なのだ。

中国メディア錢報網によると、浙江省にある靴工場・台州飛鷹靴業有限会社もそうした悩みを抱えていた、どこにでもある普通の工場だった。それが現在はそうした不満が少なくなるばかりか、人材の定着化も進んでいるという。

そのきっかけを作ったのが、超大型の調理場の設置。同工場では現在600人程度の工員が働いているが、2011年に工場外に500平米ほどの調理場を設置、工員が自ら調理できる体制を整えた。食材など各工員が準備しなければならない手間はあるものの、これまで食堂の食事に不満を抱いていた工員は自分好みの料理を作れるとあって大歓迎。特に広大な中国では、普通の会社の食堂でさえも「辛め」「あっさりめ」など幾つかの味付けを用意しているケースがあるほど、出身地によって味の好みがバラバラであるため、これは画期的なアイデアとなった。

この工場で働く貴州人の李さんが「私はもともと酸っぱい料理が好きなんです。食堂の料理は味付けが薄くて慣れなかったんですが、今では自分好みの味で作れるし、安いし満足です」と語れば、江西人の王さんは「昔は料理なんてほとんどやらなかったんですが、少しずつ勉強して。今では帰省すると料理の腕前を家族に褒められるぐらいなんですよ」と笑う。

また、この調理場設置のおかげで、残業している同僚に対して別の人が食事を用意してあげるなど、別の効果も現れている。四川人の黄さんは「そういうとき、まるで大家族になった気分を味わえます。皆で助け合って、お互いに関心を持って、心は前よりも温かくなりました」と話し、今では転職は考えていないそうだ。

このアイデアを発案・実行した董事長の李さんは「以前に比べると、人材の流出は本当に少なくなりました。大きな問題を解決することができたんです」と、その効果の大きさを実感しているという。


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