盲目男性が24日間海外一人旅、多くの“愛の手”に人生観が変化。

2012/06/06 15:11 Written by Narinari.com編集部

このエントリーをはてなブックマークに追加


近年、中国の若者の間ではバックパック旅行が流行しており、ネットではそうした旅行のブログなどを見かける機会が格段に増えているが、先日、中国ではバックパッカーとして海外を巡った盲目の男性が注目を浴びた。この男性、目が見えないだけでなく、中国語しか話せなかったことから、旅先では多くの人々から“愛の手”を差し伸べられ、それが自身の人生観を大きく変えることになったそうだ。

中国メディア知音網などによると、このチャンレンジを敢行したのは、北京でマッサージ店を経営しながら自身もマッサージ師として働く38歳の曹晟康さんだ。曹さんは今年4月18日に雲南省を出発し、徒歩やヒッチハイク、公共交通機関などを利用してベトナム、カンボジア、ラオス、タイの各観光地を巡った。飛行機は一切使わない旅で、出発前には自身の精神力を鍛えるために海南省でウィンドサーフィンを学ぶなど、それなりに準備をした上でのチャレンジとなった。

曹さんは現地の言葉を話すこともできないため、今回の旅ではジェスチャーで自分の望みを相手に伝えてきた。ご飯を食べたいときは手を口に持っていき、ホテルを探すときは寝る真似をするといった具合。また、道中で遭遇した同じ中国人の観光客から英単語を学んだりもした。それでも相手によっては自分の望みが伝わらず、食事にありつけなかったり、野宿しなければならなくなりそうなことが何度もあったそうだ。

ただ、こうした問題は曹さんにとってはまだ序の口で、今回の旅で曹さんが「もっとも困難」と感じたのはやはり移動。いつ来るか目視できない相手を求めてたびたびヒッチハイクに挑戦しなければならなかったり、杖をついて長距離歩いている最中に転倒して頭を打ち、ケガをしたり、突然雨が降りだしたものの雨宿りできる場所がわからず、ずぶ濡れになって3日間寝込んだりと、目が見えないことで一般的なバックパック旅行以上の困難に多く直面したそうだ。

しかし、無事帰国した今となっては、曹さんはこうした体験をポジティブにとらえている。というのも、道中では、多くの地元の人や中国人旅行者、外国人旅行者が曹さんに温かい手を差し伸べてくれたからで、中国語を話せるベルギー人が乗車券を購入するのを手伝ってくれたり、病で床に臥した際は台湾の夫妻がつきっきりで看病してくれたりもした。中でも曹さんにとって感慨深かったのは、バンコクで出逢ったタイ人の若者。言葉の壁から曹さんの手助けをできず、泣き出してしまったという。

曹さんは今回の24日間の旅を終えて「昔は皆が身体障がい者を差別していると思っていました。ただ、私が本当に社会に溶け込むことができれば、多くの人が友好的であることに気付きました。今回の旅で私を騙したり、いじめたりするような人は誰もいませんでしたよ」と話し、「自分の心の扉を開き、自分について正直に話すこと。それが身体障がい者にとって社会生活を始める第一歩になる」と自身の心の変化を語った。

現在、曹さんはICレコーダーに録音してきた旅の記憶を一冊の本にまとめたいと考えている。「なぜ目でしか景色を見られないというのでしょう? 私たち視覚障がい者は確かに完璧ではありませんが、人生を素晴らしくすることはできるんです」と話し、中国に500万人いるとされている視覚障がい者に自身の体験を伝え、勇気づけたいと考えているようだ。

TOPへ戻る
このエントリーをはてなブックマークに追加

Copyright © Narinari.com. All rights reserved.