迫る列車から飼い主救った犬、線路外へ引っ張り出すも自身は脚切断。

2012/05/14 10:22 Written by Narinari.com編集部

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時に飼い主が注ぐ愛情に応えるべく、献身的な行動を見せてくれる犬。米国ではいま、1匹の犬が身を挺して飼い主の命を救った事故が報道され、大きな話題を呼んでいる。先日の夜中、飼い主と犬は出先から徒歩で自宅へ向かっていた。すると、侵入した線路上で突如飼い主が意識を失う事態が発生。直後に貨物列車が接近し、危険を察知した犬は飼い主を線路外へ引っ張るように懸命の救助活動を行った結果、飼い主はけがもなく無事助かったものの、犬は右前脚を切断する大けがを負ったという。

米放送局ABCや米放送局ABC系列WCVB-TVなどによると、この事故は5月3日の夜遅くにマサチューセッツ州シャーリーを走る線路上で起きた。事故に遭遇した貨物列車の運転士によると、列車が現場に接近したとき、線路上に倒れている女性と、彼女を必死に線路外へ引っ張ろうとしている犬の存在を確認したという。運転士はすぐに急ブレーキをかけたが間に合わず、接触音を聞いたため女性のもとへと急行。すると女性は無傷で無事だったそうだが、助けようとしていた犬は右前脚を轢かれ、大けがを負ってしまった。

現場で倒れていたのは、犬の飼い主で54歳の女性クリスティーン・スペインさん。彼女はこの日、友人宅へ出かけた帰りに線路へ侵入し、連れていたメスのピットブル犬リリー(8歳)と一緒に家に向かっていた。ところが酒を飲んで酔っ払っていた彼女は、現場で突然意識を失い卒倒。それに気付いたリリーが、列車から彼女を救おうと、必死の行動に出た。

リリーがスペインさんと出会ったのは、いまから3年前のこと。ボストンの警察官をしている彼女の息子、デイビッド・ランテインさんが「アルコール中毒の母にとって良い治療になる」と、飼い主がいなかったリリーを引き取ったことがきっかけだった。彼女も、彼が「溺愛する」と表現するほどリリーを可愛がっていたそうで、飼い出してからは息子の目論見通りに飲酒量も減少。リリーにとってもスペインさんにとっても、お互いに素晴らしい関係を築ける最高のパートナーとなった。

事故を受けて、ランテインさんが運ばれた動物病院へと駆けつけると、大けがを負ったリリーは「美しい目で」大丈夫と知らせるように心配する彼を見つめ、尻尾を振ったという。しかしこのときのリリーは右前脚を切断しただけでなく、骨盤骨折や内臓を損傷する重傷を負っていた状態で、それでも気丈に振る舞う愛犬に、彼は「私たちはリリーを救ったけど、彼女は母の命を救ってくれた」と感謝の気持ちでいっぱいになったそうだ。

ただし、倒れた直接の原因は不明ながらも、現場に駆け付けた際には酒に酔った状態だったというスペインさんの不注意が、事故を招く大きな一因になったことは否めない。実際、彼女は「アルコールに関係する罪には問われなかった」ものの、線路侵入や動物虐待の容疑で事故翌日に起訴された。そんな反省も込めた感謝の気持ちもあってか、助けられた彼女は事故後、ランテインさんと共に家を掃除して、「大好きなおもちゃ」も用意してリリーの帰りを待ち侘びているという。

リリーの勇気ある救出行動を伝える事故報道は、米メディアでも広く取り上げられ、多くの人々に感動をもたらしている。リリーが運び込まれた動物保護センターのサイトでは、事故の話と共に手術費用の寄付を求めるページを開設したところ、すでに世界中から「7万6,000ドル(約600万円)」ものお金が集まったという。現在は順調に回復し、「5月12日昼頃に退院」したと伝えられているリリー。これからはスペインさんにも充分助けてもらいながら、再び仲良く幸せな時間を過ごしてもらいたい。

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