全米騒然の事件へ捧げる演奏、ブルース・スプリングスティーンが披露。

2012/04/12 02:49 Written by Narinari.com編集部

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4月6日、9日の2日間で4万人(SOLD OUT)を動員した、ブルース・スプリングスティーンのマディソン・スクエア・ガーデン(以下、MSG)公演が終了した。ブルースは観客のビールを一気飲みしたり、名曲の数々を観客と大合唱したりと、会場は大盛り上がり。その一方で、この公演では全米を騒然とさせたとある事件に対するメッセージを込めた、真正面から心を打つパフォーマンスも行われたのだ。

その事件とは、今年2月26日にフロリダ州の10代の若者、トレイヴォン・マーティンが近隣住人監視団長によって射殺された悲しい出来事。この事件において、発砲した人物が拘留も起訴もされなかったため、米国で全国的な怒りが巻き起こった。遂にはオバマ大統領が「もし私に息子が居たら、(黒人でありフードを被っているだけで「不審だ」と判断された)トレイヴォンに似ていただろう」との声明を発表するほどの騒動となり、未だに解決へと向かっていない。

ブルースがMSGで演奏して話題を呼んだのは「American Skin (41 Shots)」という楽曲。この楽曲は、1999年2月4日Amadou Dialloというギニア系米国人がブロンクスのアパートで4人の警官により誤って射殺された事件をもとに、問題提起した内容の歌詞となっている。当時演奏されるや否や、全米のプレスが取り上げ、ニューヨークの警官がブルースのMSG公演のボイコットを呼びかけた一方で、Amandou氏の両親がブルースに対する感謝のコメントをするなど社会現象になった。ローリング・ストーン誌はこの曲が一度もコマーシャルシングルやラジオでオンエアされていないにも関わらず、2000年のベスト・シングルの一つにノミネートしている。

そもそもこの楽曲を、ブルースは滅多に演奏しない。しかし今回のレッキング・ボール・ツアーでは、射殺事件が起きたフロリダ州と、このMSGで演奏した。また、ブルースの公式サイトとYouTubeの公式チャンネルでは、ライヴで演奏された数ある楽曲の中から、この楽曲のパフォーマンス映像が真っ先に公開されている。

ファンからはこの動画に対して「もうブルースが二度とこの曲を演奏しなくてすみますように…」「トレイヴォン少年よ安らかに…」と祈りのこもったコメントが集まった。彼がこの楽曲をフロリダ、そしてMSGの地で引っ張り出し、公式サイトやYouTube公式チャンネルで公開したのは、この事件について知らなければいけない、目を背けてはいけない、というメッセージを伝えたかったからではないだろうか。

ブルースが発表した最新作「レッキング・ボール」は3月に発売され、全世界16か国で1位を獲得したばかりだが、全米ではその解釈をめぐって未だに議論が絶えない。政治や、社会問題に関して臆することなくメッセージを発信し続けるスプリングスティーンだが、今の日本も、この作品にこめられた多くのメッセージを必要としているのではないだろうか。

☆「American Skin(41 Shots)」

41発…さあ乗り込むんだ
血の川を渡って向こう側へ
闇を貫く41発の銃声
あんたは戸口で跪いて彼の身体を覗き込み
死ぬなよと祈っている

それはピストルか、ナイフか?
財布か? ポケットに手をやるのも命がけ
それは秘密じゃない
秘密じゃない
友よ、それは秘密じゃない
アメリカ人として普通に生きてるだけで殺されてしまう

41発…レナは息子を学校へ送り出しながら言う
ねえ、チャールズ、通りに出たら
どうしたらいいか分かってるわよね
約束して、警官に呼び止められたらお行儀よくして
絶対に逃げたりしちゃだめよ
ママに約束して、両手はちゃんと出しておくのよ

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