ソーセージにする豚を“選挙”、ドイツの農場が始めた販売方法の狙い。

2012/03/01 10:52 Written by Narinari.com編集部

このエントリーをはてなブックマークに追加


ドイツでいま、変わった方法でソーセージを販売している農場が話題を呼んでいる。この農場が採用しているのは、公式サイトで数頭の“食肉加工予定の豚”に対する消費者投票を行い、1位の豚を選んだ人に、その豚のソーセージを販売するというものだ。

独紙ザ・ローカルなどによると、ソーセージを販売しているのは、東部ブランデンブルグ州の農場で300頭の豚を飼育しているベルント・シュルツさん。彼は、ベルリンの農業大学に通うデニ・ブーフマンさんが考案したアイデアに賛同し、インターネットを使ったこの販売方法を始めた。

具体的には、数頭の豚の写真を公式サイト上に掲載し、消費者はそれを見て「一番おいしそう」と思う豚に投票。投票は一定期間で締め切られ、1位になった豚が食肉加工され、その豚に投票した人は代金を支払うと、生前の写真で包装されたソーセージが届けられる仕組みだ。

ともすれば、消費者たちがゲーム感覚で豚の命を左右しているかのようにも見えるこの方法。実際、「インターネット上で論争を引き起こした」とも伝えられ、賛否さまざまな意見が上がっているが、ブーフマンさんとしては、話題になった時点でしてやったりといったところのようだ。そもそも彼がこのアイデアを思い付いたのは「消費者が“肉を食べるということ”について考える」(ザ・ローカル紙より)にはどうしたら良いかを突き詰めた結果。年々豚の消費量が増えているドイツの状況に対し、彼は「“動物の命”に対する認識を高めたい」と考えていたそうだ。

ビールと並びソーセージでも有名なドイツ。その材料にも使われる豚は2011年の1年間に、ドイツ国内で約6,000万頭が加工処理され、約560万トンの豚製品が国民のお腹に入ったという。日本の総務省統計局が公表している2005〜2007年度の“世界の豚製品生産量”を比較すると、その量は毎年120万トン前後で推移する日本のおよそ5倍弱。統計当時が約400万トンだった生産量世界2位のドイツは、その後も生産量が増え続けており、まさに豚は同国の食卓や酒席に欠かせない食材だ。

そうした状況を踏まえ、ブーフマンさんはこの方法なら「消費者は自分が食べる豚に関する情報をネットで知り、豚の命のことを思いながら口に入れるはず」と考えている。消費者の間で関心が高まりつつある食材の情報提供と、食料となる動物の命を考えてもらうきっかけにと生まれたこのアイデア。彼の思いがどこまで伝わっているかは分からないが、サイトにはだんだんと多くの人が集まるようになってきたそうだ。

飽食状態と言われる国がある一方で、人口増加により将来の世界的な食料危機への警鐘も鳴らされている現在。豚だけに限らず、さまざまな食材をおいしく口にできる喜びと感謝の気持ちを消費者1人1人が改めて考えるのは大切なことだが、皆さんは今回の販売方法についてはどう思う?

TOPへ戻る
このエントリーをはてなブックマークに追加

Copyright © Narinari.com. All rights reserved.