空気中の水を集め農業に活用、ダイソン財団主催コンテストの優勝作品。

2011/11/18 10:00 Written by Narinari.com編集部

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英家電メーカーのダイソンがデザインや教育、医学研究など幅広い分野でサポートしようと立ち上げたジェームズ・ダイソン財団が先日、「ジェームズ・ダイソン・アワード」なる製品デザインコンテストを実施した。その結果、優勝はオーストラリア人デザイナーの作品に決定。空気中の水を集めて地中で散水できるアイデアが高い評価を受けたという。

「ジェームズ・ダイソン・アワード」は、現在勉強を重ねている学生やデザイナーが対象の製品コンテスト。応募に求められる作品の条件はただ1つ、「何らかの問題を解決するものをデザインすること」(公式サイトより)だ。英国、米国をはじめ、日本や欧州、マレーシアやオーストラリアなどの18か国在住で、工業デザインを勉強する学生、または卒業して4年以内の人に対し、生活する上での問題を解決できる独創性溢れる製品のアイデアを求めている。

今年8月2日までにエントリーされた作品の数々は、参加18か国の有名デザイナーや専門家などで審査が進められ、11月8日に優勝作品が発表された。その栄冠に輝いたのは、オーストラリア人デザイナーで27歳のエドワード・リナカーさんが考案した「Airdrop irrigation system(投下灌漑システム)」。近年、干ばつ状態が続くオーストラリアでも「農業の問題を解決できるかもしれない」(英紙デイリー・メールより)と、このアイデアが生まれたそうだ。

メルボルンにあるスウィンバーン工科大学を卒業したリナカーさんが、干ばつ状態でも作物が育てられるないかと着目したのが空気中の湿気。そのヒントとなったのが、アフリカの砂漠地帯などに生息している「ナミブビートル」という小さな虫だ。この虫は、背中に付いている「親水性の皮膚」(豪紙シドニー・モーニングヘラルドより)によって、乾いた砂漠でも空気中の水分を付着させ、わずかな湿気の場所でも生き抜いているという。ここからアイデアを得て、リナカーさんは湿度の低い場所でも水を集められる装置を作り上げた。

一見すると電気スタンドのような彼の装置は、地中部分に螺旋状にパイプを巻いた冷却部があり、ここへ集めた空気を取り込んで水を抽出(※結露を起こさせる)。取り出された水はポンプで吸い上げられ、植物の近くに埋められたパイプによって、直接根に水を撒く仕組みだ。リナカーさんの研究によれば、この装置を使うと「砂漠で最も乾燥した場所でも、1立方メートルの空気中から11.5ミリリットルの水が得られる」(デイリー・メール紙より)と試算。空気中から水分を得るアイデアはこれまでにも出されているというが、今回のシステムは「ほかのものより有益」と自信を持っているそうだ。

ジェームズ・ダイソン財団も、彼の作品を「現実に問題になっていることに対する独創的な解決策」(シドニー・モーニングヘラルド紙より)と高く評価し、優勝に選んだと説明。この優勝でリナカーさんだけでなく、彼が多くを学んだスウィンバーン工科大学に対しても1万ポンド(約123万円)が贈られる。獲得した賞金で「さらに大きな農業用製品の試作品を作りたい」と意気込むリナカーさん。今回の作品は、弁護士と協議を重ねて近日中にも特許を取得し、2年以内の販売を目指すとしており、彼はそれが世界の役に立つよう、装置を「さらに時間をかけて改良させたい」と意気込んでいる。

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