中国で先日、公共バスの乗客が突然昏迷状態に陥り、運転手の機転で急遽病院に向かう一幕があったのだが、道を急ぐばかりに道路を逆走してしまい、運転手の取った行動に賛否両論が出ているようだ。

中国紙齊魯晩報などによると、この出来事は山東省済南市槐蔭区營市街でのこと。10月24日午前、公共バスK58路線の車内で女性客が発作を起こし、昏迷状態に陥ってしまった。同乗していた家族は救助を求めたが、車内には医者もおらず、手の施しようがない。そこで運転手はすぐに家族に120番（救急）をかけさせて救助を求めるとともに、車内のほかの乗客に対して「病人を病院へ送り届けたい」と理解を求め、乗客もこれに賛成したことから、急遽バスを病院へ向わせることになった。

これだけならば、それほど大きな問題にはならなかったかもしれない。しかし、運転手は昏迷状態の乗客をなるべく早く病院に送り届けたいとの思いから、道中、わずかな時間だけ道路を逆走してしまった。そして、目的地の市立五院近くで道路を逆走している公共バスが市民に目撃され、事情を知らない人々を驚かす事態に。ちなみに、救急搬送された乗客は無事に危機を脱したそうだ。

中国でこうしたケースは、これまでにも幾度か報じられている。例えば2008年11月には、吉林省延吉市のタクシー運転手が高熱で昏睡状態となった子どもを救急病院に送り届けるため、いくつかの赤信号を無視して病院へ搬送。後に信号無視が確認され、いったんは処罰が下されたものの、事情を知った市民からの申し立てもあり、結果としてタクシー運転手は免責された。

目下、このバスの運転手にどのような対応がなされるのかは不明だが、中国のネットでは運転手の行動を称賛する声が多く、過去のケースと同様に処罰を回避できる可能性もある。しかし、一方で「乗客がどんな状況にあろうと公共バスが逆走するのはどうなのか」「救急車がくるまで現場で待機していたほうがよかった」などと運転手を批判する声も。仮にこうした“特例”を多く認めてしまうと、法の抜け道として悪用される可能性もあるため、交通警察の対応に注目が集まっている。