71人が紡いだ“移動する美術館”、宮崎駿や松本大洋らも参加し12か国リレー。

2011/10/18 17:39 Written by Narinari.com編集部

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2006年9月、日仏のイラストレーターであるジェラルド・ゲルレと堤大介は、パリに来ていた。ゲルレは堤の持っていた真っさらのスケッチブックに想像力を掻き立てられ、堤と友人になったばかりの絵本作家レベッカ・ドートゥルメールに絵を描いてもらうよう依頼。打算もなく、熱意に満ちた若いアーティストのほんの思いつき――これが4年半、71人のアーティスト、12か国を巡った“スケッチトラベル”の始まりだ。  

スケッチブックは常にアーティストの手から別のアーティストに手渡され、“旅”をしていった。参加したのは「木を植えた男」のフレデリック・バック、ディズニーの“伝説のアニメーター”グレン・キーンなど、世界的に著名なイラストレーター、アニメーター、マンガ家たちだ。

日本人では「バーチャファイター」や「神宮寺三郎」のデザインで知られる寺田克也、「ポポロクロイス」シリーズのキャラクターデザインを担当した福島敦子、文化庁メディア芸術祭やマルチメディアグランプリなどに輝いた森本晃司、「ピンポン」「鉄コン筋クリート」の松本大洋、アニメの世界のアカデミー賞として知られるアニー賞受賞者の上杉忠弘、「ICO-霧の城-」(講談社文庫)やその他多くの装画を手がける丹地陽子、ニューズウィーク誌の「世界が尊敬する日本人」に選ばれたニューヨークを拠点に活躍するアーティスト・清水裕子などなど、錚々たる顔触れが並んでいる。そして、最後のページはゲルレと堤の尊敬する宮崎駿の絵によって埋められ、スケッチブックは完成を迎えた。

フランスで先行発売された“スケッチトラベル”の本を、ナリナリドットコムのフランス特派員も早速入手。楽しみながら読んだが、どの作品も印刷であるにも関わらず、その筆致や個性が息吹いているようで、ずっと見ていても飽きることがない。特に最後の堤大介、フレデリック・バック、宮崎駿と続く3幅の絵は圧巻。絵に込められた思いをまざまざと感じることができる。

スケッチブックが世界を巡った4年半の間に、堤はピクサーに引き抜かれて「トイ・ストーリー3」のアートディレクターとなり、今年3月の東日本大震災の際には、率先してアーティストによるチャリティを行う立場となっていた。完成した“移動する美術館”ともいえるスケッチブックは、2人が当初から予定していた通り、10月17日にベルギーでチャリティ・オークションへ。3万ユーロ(約317万円)から始まった競りは、グングンと値が上がり、最終的には7万ユーロ(約739万円)で落札された。この収益と本の印税は、すべて識字教育を推進する国際的な非営利団体「Room to Read」に寄付されることになっている。

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