枠と日付だけの絵が700万円? “英ミニマル・アート創始者”作品が初競売。

2011/10/02 12:24 Written by Narinari.com編集部

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芸術の世界には、線や色を最小限に抑えて表現する「ミニマル・アート」という分野がある。英国ではこの10月に、「英ミニマル・アート界創始者の1人」(英紙デイリー・メールより)とされるアーティストの作品が初めて競売に出される運びとなり、多くの関係者が興奮しながらその日を待ち侘びているそうだ。

その作品を描いたのは、2004年4月に70歳でこの世を去った英国人アーティストのボブ・ロウ氏。ロウ氏の公式サイトによると、1934年に生まれた彼は15歳で建築労働者として働く傍らデザイナーを志し、独学で芸術の道を邁進したという苦労人だ。そして、1960年代頃から作品が注目されるようになり、フランスでは賞を受けたことも。また、1970年代には活躍の場を欧米へと広げ、アーティストとして広く知られる存在になった。

そんな彼が追求していたのが「ミニマル・アート」と呼ばれる分野。複雑な模様を描くことなく、できる限り線や色を抑える中で、どこまで自分の世界を表現できるのかにこだわった独特なアートだ。彼が活躍していた1960年代から70年代にかけては、米国で「ミニマル・アート」が盛り上がりを見せていたが、彼が拠点とした英国ではそれほど広がりを見せていなかったため、残念ながら当時は国内で彼の功績が讃えられることはあまりなかった。

その後も「ミニマル・アート」を追求し、数々の絵や彫刻を生み出し続けたが、2004年に他界。しかし、「ミニマル・アート」の存在が英国内でも知られていくと、彼は「英国におけるミニマル・アート界創始者の1人」として名前が広まり、今では大英博物館を始め、主に英米にある多くの美術館に彼の作品が展示されているという。そんな彼の作品が、10月13日に初めて競売に掛けられることとなり、美術関係者の人たちはいま、「ものすごい興奮」でその登場を待っているそうだ。

英競売会社Bonhamsによると、出品される注目の作品は、白いキャンバスの縁をなぞるように黒い線で枠が引かれ、右下に小さく「22.8.69」とだけ書かれているもの。「Nothing to be Afraid of V 22.8.69」とのタイトルが付けられたこの作品、素人目にはシンプル過ぎる印象を受けるが、ロウ氏がこれを生み出した背景や考え方を併せて見ると、極めて貴重な作品になるという。

縦108インチ(約274cm)、横84インチ(約213cm)と大きなこの作品は、これまでさまざまな場所で展示された、その筋では有名な一品ということもあり、Bonhamsが公開している評価額は「63,000ドル〜94,000ドル(約485万円〜725万円)」とのこと。パッと見は誰にでも描けそうと思えてしまう作品でも、アーティストとしてそれだけの価値を生み出すだけの活躍を重ね、かつ競売初出品という期待もこの金額に反映されているのだろう。果たして落札価格はいくらになるのか、楽しみなところだ。

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