昨年、米国で2年以上にわたり警察の追跡を交わして逃げていた泥棒が捕まった。彼の名はコルトン・ハリスムーア容疑者。現在20歳の彼は、数々の犯行現場に自分の足跡を残したため“裸足の泥棒”と呼ばれ、型破りな逃走方法が話題を呼んだ。あるときは盗んだ車で警察とカーチェイスを繰り広げ、またあるときは独学で操縦法を学んで、やはり盗んだ小型飛行機で高飛び。そうした末の昨年7月にバハマで捕まり、いまは獄中生活を送っている彼は、このほど20世紀フォックスとの間で事件の映画化に合意したという。
そもそも、ハリスムーア容疑者が警察に追われるきっかけは、2008年4月までさかのぼる。強盗などの犯罪を重ねて懲役3年の刑を受け、収容される社会更生施設への移送中に脱走したことがすべての始まりだった。ここから再び追われる身となったが、森に隠れるなどして警察の目をかいくぐり潜伏生活を開始。そして、必要な物資や金を強奪しながら、次第に米国で注目を集める逃亡者になっていった。
そんな彼がほかの逃亡者と異なっていたのは、大胆不敵とも言える行動の数々だ。2008年には車を盗み、カーチェイスを繰り広げた末に森へ逃げ込んでまんまと警察から逃げ、さらにボートや小型飛行機なども次々と盗んでは場所を転々、米国やカナダを縦横無尽に逃走し続けた。その様子を伝える報道が出るたびに、いつしか“裸足の泥棒”として若者を中心に人気を集め、インターネットでは彼のファンサイトも登場。Facebookでは参加者7万人を超えるファンクラブも現れ、逃走を応援するユーザーたちで賑わった(※現在も4万人超が参加)。
しかし、そうした逃亡生活も、2010年7月11日に終止符が打たれる。彼が盗んで利用したと思われるセスナ機がカリブ海の島国バハマで不時着していたと分かり、重点的な捜査を行っていたところ、ボートに乗って逃げる彼を発見。ここでついに逮捕となった。あれから1年、米連邦裁判所での審理が続く中、反省の色も見られるようで、数々の容疑について「罪を認めている」(米放送局CBSより)とも。判決は今年10月にも下される見込みだ。
今回、ハリスムーア容疑者が20世紀フォックスと合意した映画化の話は、彼がこれまでに損害を与えた多くの被害者に対する反省のためだという。彼は、現在収容されている留置所を通じて「何か月にもわたって交渉を続けてきた」(米紙ロサンゼルス・タイムズより)とのコメントを発表。この中で、契約金で被害者の損害を回復できるなら「合意するつもりだった」とも明かし、約140万ドル(約1億700万円)と見られる被害総額を念頭に交渉を続けていたそうだ。その結果、20世紀フォックスは130万ドル(約1億円)を彼に支払うことで合意し、そのすべては被害者への賠償金に充てられる。
刑期を終えたあとは大学で「数学と航空学」(米紙シアトル・タイムズより)を学びたいと話しているというハリスムーア容疑者。逮捕から1年経った現在でも、毎週200通前後の手紙が寄せられる人気があるというものの、一方で彼に強盗に入られたために経営していたレストランが閉店に追い込まれ、その人気ぶりを腹立たしく感じている被害者もいる。良くも悪くも注目を集め続ける彼には、これからも反省の気持ちを忘れず、被害者たちに心からの償いを続けることが求められそうだ。