裏庭に家族や友人限定のパブ、行きつけの“社交の場”閉店で自ら場を作る。

2011/06/20 15:57 Written by Narinari.com編集部

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お酒が好きな人にとって、親しい仲間と楽しく盛り上がり、酒を酌み交わす時間は最高のリラックスタイム。特に約束をしていなくても、いつでも誰かがいるような自然に集まれる店があれば、なお幸せというものだ。英国に住む63歳の男性は2年前、そんな大切な社交場を失いそうになっていた。行きつけのパブが閉店することになり、大切な友人たちと頻繁に顔を合わせられなくなる危機が訪れたのだ。しかしこの男性、閉店するパブから椅子などの設備類を譲り受けるなどして、自宅の庭に家族と友人専用のパブを開設。目的は商売ではなく友人たちとの顔合わせとあって、利益はすべて慈善事業へ寄付しているという。

この男性は、コベントリーで溶接工やバーテンの仕事を務め上げ、今は悠々自適な生活を送っている63歳のフランク・フォックスさん。2年前、彼は行きつけにしていたパブが閉店すると聞いたとき、大きなショックを受けた。そこは、フォックスさんが長年交流を重ねてきた友人たちと楽しい時間が過ごせる大切な場。事あるごとに悲喜こもごもを皆と分かち合った思い出の場所が無くなってしまうのが、彼にとっては受け入れ難い出来事だったそうだ。

さらにフォックスさんが行きつけの閉店を惜しむ理由は、その時期にあった。年を重ねて現役から退いた仲間たちだけに、遠からず永遠の別れがやって来てもおかしくない年齢になっているとはいえ、この年にフォックスさんは4人も友人を失くしたそう。「私にとっては悪い年だった」(英地方紙コベントリー・テレグラフより)と話すフォックスさんは、そのときに閉店の知らせを聞いて、「友人たちと顔を合わせ続けられる場が欲しい」と考えた。その結果、自分で皆が集まるパブを作ってしまおうとの結論に至ったという。

気持ちを固めたフォックスさんは、自宅の庭に立っていた小屋の改装に取り掛かった。資金は5,000ポンド(約65万円)と限られているだけに、閉店した店からは処分される前に「椅子やバースタンド」などを譲ってもらう形で調達。そのほか電灯や大型テレビなども揃えて、こつこつと1年にわたって準備を重ね、晴れて自分の名前も入れたパブ「ザ・スヌーティー・フォックス」を開店させた。

全20席の小さな店を開いた目的は、あくまでも彼が仲間と飲みたいだけとあって、入店できるのはフォックスさんの家族と友人だけ、しかも店が開くのも金土の夜8時からと限定的。ただ、希望通りの店を実現させたフォックスさんは、毎週末仲間たちを集めて大いに楽しんでいるようだ。店の壁には長年の飲み仲間の写真も飾られ、やって来る仲間たちにとっても彼の店は早くも大切な場所になっている。

73歳のケン・クーベスさんも、フォックスさんのパブ開店を喜んでいる仲間の1人。彼は3月に、9月で結婚50周年を迎えるはずだった妻をがんで亡くしたばかりだという。しかし最愛の妻を亡くした悲しみは、励ましてくれる仲間が集まるフォックスさんの店を訪れれば抑えられるそうだ。「私たちは大きな家族みたいなものだ」と、店の有難味を大いに感じているクーベスさん。夫婦揃って同じ誕生日だったという6月21日にはフォックスさんに店を開けてもらい、仲間と一緒に酒を酌み交わす予定だという。

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