母に会うため10歳が“大冒険”、トラック荷台に潜るも隣国へ運ばれる。

2011/05/16 07:58 Written by Narinari.com編集部

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涙なくしては見られない感動的なアニメの中で、名前を挙げる人が多い作品の1つが「母をたずねて三千里」。イタリアの少年マルコが、アルゼンチンへ出稼ぎに行った母を追って1人旅をするストーリーで、多くの人が母親を求め続けるマルコの姿に胸を熱くしたことだろう。そんな名作を思い起こさせる事件が、先日、南米で起きた。この話の主人公は、ボリビアで暮らしていた10歳の少年。彼は離れた街で働く母親に会いに行くため輸送トラックの荷台下に忍び込んだのだが、その先には思いもよらない展開が待っていたという。

この少年は、ボリビア西部の街オルロで暮らす10歳のフランクリンくん。彼は「父と兄弟たち」(英放送局BBCより)に囲まれ、男だらけの環境で生活していたそうだ。なぜなら彼の母ゼノビアさんは、以前「コカイン製造に使用される化学製品を運んだ」(BBCより)罪に問われ、3年半の禁固刑を受けて服役したから。そして1か月前に出所するも、オルロの北東に位置するコチャバンバという街で農業を手伝う仕事を始め、依然フランクリンくんとは離れた生活を送っていた。

そんなある日、「14歳の兄から暴力を受けていた」(英紙ガーディアンより)とされるフランクリンくんは、母親に会おうと1人で家を飛び出したという。問題は、コチャバンバまでの移動手段。そこで彼は1台の輸送トラックを見つけ、荷台下にあったスペース部分に潜り込んだ。運転手は彼の存在に気付かないまま出発してしまい、こうしてフランクリンくんの旅は始まった。しかし、トラックの行き先を確認していなかったのが災いとなり、この後、彼の身には厳しい状況が訪れる。

トラックが向かったのは、母がいる東のコチャバンバとは正反対、西に約1,000キロ離れた隣国チリの街イキケ。フランクリンくんは何も用意しておらず、トラックが走り続けた丸2日間、一切飲まず食わずの状況だったという。さらに南半球が冬に向かう時期であることに加え、アンデス山脈の標高が高い場所では気温も相当低く、寒さとの闘いも待ち受けていた。

ともあれトラックはやがて止まり、イキケの街に到着したフランクリンくん。当然のことながら見知らぬ土地で勝手が分からない彼は、完全に迷子となって街の中をフラフラと歩きまわっていたそうだ。しかし、そのおかしな様子に気付いた地元の女性が彼に声をかけ、事情を知ると自宅へ連れ帰り保護。一連の経緯は警察を通じてボリビア当局にも知らされ、母ゼノビアさんにも状況が伝えられたという。

チリの地元メディアに対し、「お母さんに会いたかったんだ」と話したフランクリンくん。一方、母ゼノビアさんも「刑務所に入るまで息子と離れたことはなかった」とボリビアのメディアに話し、彼に対する愛情を吐露した。結局、彼はボリビア当局に保護されるまで、チリ当局の許可のもと、彼を見つけた女性宅に留まることに。そして5月14日、紆余曲折を経てようやくコチャバンバに着いたフランクリンくんは、乗っていたバスの中に母が現れると「『ママ!』と叫び、母の腕の中へ」(ボリビア紙オピニオン・ボリビアより)飛び込んでいった。2人は互いに抱き合い、3年半ぶりの再会を大いに喜びあったという。

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