趣味の装甲車に近隣住民反発、合法的・平和的に楽しむ所有者は納得いかず。

2011/03/04 14:26 Written by Narinari.com編集部

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人が集まっている場所に暮らしていれば、大なり小なりトラブルが起きることはある。そのきっかけとなる出来事はさまざまだが、大勢の意思に反する行動を取り、近隣住民の“和”を乱す人が現れたとき、何かしらのトラブルが生まれる可能性は高い。元英国陸軍のエンジニアというある男性は、個人的な趣味で、2月中旬に軍払い下げの装甲車を購入した。ところが、この車両を普通の乗用車と同じように、家の前にある路上駐車スペースに停めていることから、多くの近隣住民が「怖い」「反社会的」と抗議の声を上げているという。

問題が起きているのは英南部オックスフォードにほど近い、ウルバーコートにある閑静な住宅地の一角。軍エンジニアの職を引退し、妻や息子らとこの地で暮らしているニコラス・クラフチェンコさんが今回の騒動の主だ。

英紙デイリー・テレグラフによると、クラフチェンコさんは運転を楽しむほか、ショーやチャリティーイベントで展示したいとの願いから、英陸軍が所有していた装甲車を1万ポンド(約130万円)で購入。1960年代に使用されていたという車両は、厚い鉄板で覆われた車体とキャタピラが威圧感を放つ、住宅地の風景ではちょっと浮いてしまう存在だ。

これをクラフチェンコさんは、普通乗用車と同じ様に自宅前の道路に駐車。しかし、近隣の住民たちの多くが、一斉に不安や反発の声を上げた。クラフチェンコさん宅の3軒隣に住む男性は「路上の駐車スペースが限られているのに、余分に幅を取っている」と怒り、ある人は「家を出るたびにあの車を見るハメになり憂鬱」と落ち込み、また別の人は「子どもから『いまは戦争中なの?』と聞かれる」と困惑するなど、住民たちの間にはさまざまな思いが渦巻いているようだ。

こうした思いが抑えられなくなった住民たちは、オックスフォード市当局や警察へ撤去するよう直談判。しかし「その道路には駐車規制がなく、車両も道路通行用で登録され、課税対象になっている」との判断から、市や警察は対応に二の足を踏んでいる状況らしい。

実はこれには伏線もあるようで、昨年9月に市が“捨てられている”と判断した5台の自動車を強制撤去した中にクラフチェンコさんの車があり、返還を求めて裁判を起こした。その結果、彼の訴えが認められ、2月1日に市が車を返すよう命じる判決が出たばかりだという。

一方、周辺住民の訴えに対してクラフチェンコさんは、「自分のほうが被害者」と主張。購入した装甲車は「ロールスロイスのエンジンを積んだ四角い箱」として、恐怖を与えるものではないと説明しているほか、違法ではないことから「問題なし」を強調している。そして警察や市当局に抗議しいている住民たちの行動には「悩まされている」とも。逆に彼らの行動が「合法的で平和的な私の生活の楽しみを妨げている」(オックスフォード・メール紙より)と語るなど、納得がいかない様子だ。

平行線のまま解決の糸口を見出せない状況だが、現在は市当局も警察などと協力をして、当事者同士による話し合いを重ねているという。法律と秩序の観点から難しい対立に巻き込まれた形のウルバーコートの住民たち。客観的にどちらが悪いとは言えない以上は、両者の落としどころを探るしかないようだ。

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