英国に、海岸で石運びを続けている73歳の男性がいる。はじめは運動のつもりだった石運びだが、崖の浸食阻止に一役買っていることもあり、14年間にわたり毎日の習慣にしているという。いまでは地元でも有名な存在になった男性は、推定200トン分もの石を崖下に積み上げてきたそうだ。

英ニュースサイトのスモールワールド・ニュースサービスや英紙デイリー・エクスプレスなどによると、この男性は英東部ノーフォーク州にある海岸沿いの村オールドハンスタントンで暮らす、73歳のマイケル・ケネディさん。彼は14年前にロンドン地下鉄の仕事を勤め上げ、定年退職後すぐに現在の場所に引っ越してきたそう。2人の子どもに恵まれながら奥さんとは別れていたケネディさんは、移り住んで以来、気ままな時間を過ごしてきた。そんな彼がいま、自分にも地域のためにも役立つ日課として行っているのが、毎日2時間の海岸での石運びだ。

この日課を始めたのは、引っ越して来てから間もなくのこと。当初は自分の健康を維持しようというだけの目的で、毎日海岸に落ちている手頃な石を見つけては、浜辺にそそり立つ崖下まで運ぶ運動を繰り返していた。ところが、この辺りの崖は石灰岩で、過去100年間で30メートル近く浸食された場所。知らぬ間にケネディさんの石運びは崖の浸食阻止に役立っていたわけだ。

14年間、彼は土曜日を除く週6日はこの海岸に通い、正午から午後2時までの2時間ほどを石運びに費やしている。土曜日だけは「熱狂的なファン」だというサッカープレミアリーグのチェルシーを応援するために休んでいるそうだが、それでもこれまでに費やした時間を計算するとザッと約8,700時間超。200トン近い量の石を地道に崖下へ積んで行った結果、辺りの海岸には石の少ない、海水浴客が安全に楽しめる砂浜が広がった。同時に彼はゴミ集めも行っており、きれいな海岸の維持に努めている。

そんな彼の長年の行動を、村長も称賛。また、すでに英国でも知られた存在のようで、わざわざ彼の姿を見るためにこの土地を訪れる観光客もいるそうだ。「私にとってはドラッグのようなもので、もう止められない」と、今後の活動にも強い意欲を見せるケネディさん。天候や季節関係なく、週6日の石運びは大好きな作業だという。

「100歳になっても続けたい」と頼もしい発言も口にしているが、ケネディさんにはいま、ちょっとした悩みがある。今年は海から運ばれてくる石が極端に少なく、浜辺にあまり見当たらないそう。「14年間でこんなことなかったのに」と話すほど厳しい状況に直面しているため、「週6日の活動を4日だけにしようか」（英紙デイリー・エクスプレスより）と悩んでいるそうだ。