カナダに、亡き父のお墓を建てたいと行動を起こした9歳の男の子がいる。それは自分のおもちゃを集めてガレージセールを開き、墓石の代金を集めようという計画。ただ、子どもの所有物を売ったところで、墓石を購入するに足る金額を集めるのは難しい話だ。ところが、この計画が地元メディアで伝えられると、先日開かれたガレージセールには多くの市民が詰めかけるほどの大盛況に。さらには墓石を寄付する企業も現れたという。
オンタリオ州キングストンに住むブレイク・マクギネスくんは、どうしても「何とかしたい」問題を抱えていた。2009年3月、大好きだった父リック・リースさんが胃動脈瘤により他界したのだが、現在は墓石が無いまま埋葬されている状態。カナダ紙トロント・サンに母リンダさんが語ったところによると、リックさんの死後はお金に余裕がなく、墓石の購入までは至らなかったという。そのため、リンダさんと定期的に墓参りをするブレイクくんには、墓石がない父のお墓は寂しく映っていたようだ。
「お婆ちゃんにも、お爺ちゃんにも墓石があるんだよ。だから、お父さんにも墓石を持っていて欲しいんだ」(トロント・サン紙より)と語るブレイクくん。そこで彼は、自分のiPodを買うために開こうと計画していたガレージセールの目的を、父の“墓石購入資金の調達”に変更した。ガレージセールの開催日は9月25日朝。彼は父のために、大事にしていたおもちゃやゲームも惜しみなく売りに出すことにしたという。そんな息子の行動にリンダさんは、正直なところ「墓石購入までは届かないかも」と思いながらも、「彼をとても誇りに思う」と、自らも洋服などを出してガレージセールに協力した。
すると、この話はリンダさんが働くヘアサロンの同僚や客を通じて広がり、さらにはトロント・サン紙などのメディアを経由してカナダ全土へと伝わる。そうして迎えた9月25日の当日、キングストンのモントリオール通りに開いたブレイクくんの店には多くの客が訪れた。しかも、やってきた客は物を買わずに「20カナダドル札(約1,600円)や50カナダドル札(約4,000円)を男の子に手渡す」(カナダ紙キングストン・ウィグスタンダードより)人がほとんどだったという。
話はこれだけに留まらない。プロアイスホッケーリーグNHLのモントリオール・カナディアンズは、選手全員のサインが書かれたスティックをブレイクくんにプレゼント。カナダの歌手からはサイン入りDVDやハーモニカが贈られ、そのほかにもホッケー用具や、彼が欲しがってたiPodも送られてきたそうだ。
さらに目的の墓石に至っては、米テキサス州の企業や個人など、10もの寄付申し出があったという。母リンダさんはその中から「トロントの墓石会社と連絡を取った」(キングストン・ウィグスタンダード紙より)そうで、デザインも含めてすべて無料で、リックさんの墓が建つことになった。
となると、墓石購入のために市民から寄せられたお金の行き先が気になるところ。その金額はガレージセールで直接寄付された分と、「世界中から届いた」という分を合わせて、総額は数千カナダドル(※1カナダドル=81円 10月1日現在)に達するため、一部はトロントの病院で病気と闘う子どもたちのために寄付され、残りはブレイクくんが18歳になったときに引き出せるよう、銀行に預けたそうだ。
父からもらった猫のぬいぐるみをそばに置きながら、頑張ってガレージセールを開いたブレイクくん。きっと天国のリックさんも、父を思って行動を起こした息子の気持ちと、たくましく成長した姿を喜んだに違いない。